2026年3月以降、中東情勢の緊迫化により、ホルムズ海峡の通航が事実上制限される状況が続いており、プラスチックやゴムの原料であるナフサの供給リスクが高まっています。政府が「ナフサは不足していない」との見解を示す一方で、消費者や民間企業から先行き不安の声が上がっており、生活必需品の値上げや供給不安、物価高による倒産などもみられます。本稿では「ナフサ供給リスクから読む不動産市況」と題し、3部構成で解説します。
第1部 原油高がもたらすインフレと金利上昇
第2部 緩やかな景気回復下の企業行動と円安
第3部 供給リスクと資本効率をふまえた不動産戦略
第2部では、緩やかな景気回復下の企業行動と円安について解説します。

永濱 利廣(ながはま としひろ) Toshihiro Nagahama
株式会社 第一ライフ資産運用経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
担当:内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
2026年1-3月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比プラス0.5%(年率換算プラス1.8%)と、2四半期連続のプラス成長を維持しましたが、民間企業による設備投資は前期比0.7%減と、10-12月期のプラスから一転してマイナスとなった。中東情勢の緊迫化やナフサ供給リスクに伴う先行き不安から、企業が中長期的な投資に対して一斉に慎重姿勢に転じていることが、この指標に表れている。政府の「緩やかな景気回復」に対し、現場では慎重な見方も広がっている。

民間調査機関(帝国データバンク等)のデータによると、足元の「倒産」は単月で800~900件規模と高水準で推移しており、物価高によるコスト増が企業収益を圧迫している。

背景にあるのは、仕入価格の上昇を余儀なくされる一方で、購買力の低下を恐れて最終価格への「価格転嫁」が進まない日本の市場構造である。これに加え、日本のように原油の海外依存度が高い国は、輸入調達コストの上昇を余儀なくされ、それらの価格が上がった分だけ円を外貨に換えて購入する観測が強まり、円安圧力となる。外国為替市場における断続的な円安傾向が、輸入原材料価格をさらに押し上げるダブルコスト(円安×ナフサ高)となり、製造業から小売業、運輸業まで広範な業種で収益を圧迫し、いわゆる「物価高倒産」に至る例もみられる。
円安の進行は輸入物価を押し上げ、企業の仕入コストを急騰させている一方で、消費者物価への転嫁は限定的であり、企業物価との乖離が拡大している。こうしたことから、実質賃金の低迷も相まって、価格転嫁が困難な構造が一層強まっている。

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