2023/8/18 相続

民法改正のポイントを読み解く|第3部 相続土地国庫帰属制度について

相続

2023年4月より施行された民法改正。今回の改正で、共有制度、財産管理制度、相続制度や相隣関係がどう変わったかについて主要ポイントを読み解きます。

第1部 相隣関係規定の見直しについて
第2部 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し
第3部 相続土地国庫帰属制度について
今回は相続などで取得した土地を国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」についてその概略を解説します。

古い家

相続土地国庫帰属法は2023年4月27日より施行されました。

所有者不明土地を発生させ土地の管理不全化を招いてしまった要因として、都市部への人口移動や、地方の人口減少・超高齢化進展など、地方における土地の所有意識の希薄化、土地利用意欲の低下が背景としてあります。特に相続を契機として止むを得ず土地を取得した者については、積極的な土地の利用意向がないにもかかわらず、積極的土地取得者と同様に土地の管理についての義務を負うことが大きな負担となっていました。土地の所有に伴う管理責任を将来にわたって負うことが酷である場合も多いことから、相続等により取得した土地を手放すことを認め、国庫に帰属させることを可能とする仕組みとして法整備したものが、相続土地国庫帰属法です。

「放棄」や「寄付」といった制度と比較検討されがちですが、「放棄」は「相続放棄」を意味し、被相続人が遺した遺産全てに対して「相続放棄」をすることになります。望まない土地のみに限定して放棄する事はできず、その他の遺産についても放棄する必要性があること、また相続放棄は自身が相続人であることを知った日から3ヶ月までに家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てなければならず、熟慮期間が短期間であることも相まって選択されるケースは多く見受けられません。

一方で「寄付」については、土地所有者と国との間における贈与契約であることから、当事者の合意が無い限り寄付は成立せず、国から断られる場合もあります。今般の相続土地国庫帰属法においては、一定の要件を満たした場合は、所定の手続きを経て法律の規定に基づき、国庫に帰属させることができる点で異なります。

より使いやすい制度にも思えますが、しかし適用には高いハードルがあります。

以下申請にあたる要件を見ていきましょう。

相続

承認申請者の該当する要件

相続土地国庫帰属法を申請するための人的要件として、相続・遺贈等により土地を取得した者に限られ、以下のⒶ~ⓒの3パターンに限定されます。

Ⓐ所有権の全部を取得した者
Ⓑ所有権の一部を取得した者
ⓒ共有に属する土地の共有持分を取得した者

Ⓐについては、非常に分かりやすい要件ですが、Ⓑについては、相続・遺贈等により所有権の一部を取得した者は、従前より自身が所有していた一部と併せて申請することが可能です。また、ⓒについては、相続発生前の段階でその土地が共有の状態であった土地について、相続・遺贈によって共有持分の一部を取得した共有者は、他の共有者全員と共同して申請する場合に限って、承認申請権が認められます。これにより、他の共有者も相続土地国庫帰属法の適用を受けられることが大きなメリットとなります。尚、法人は相続等により土地を取得することが出来ないため、基本的には承認申請権の人的要件がありません。

土地

却下事由に該当する要件

相続・遺贈等により所有権を取得した土地であれば、どんな土地でも相続土地国庫帰属法の対象となるわけではありません。①建物が存在②担保権(抵当権)等が設定③第三者の収益・使用される権利が設定④土壌汚染⑤土地の境界が明確でなく、紛争リスクがある土地等、その土地が国庫に帰属した後に管理等が煩雑な土地、費用負担が生じるリスクがある土地については、申請段階における却下事由とされ、申請そのものが受理されません。

不承認事由に該当する要件

さらに却下事由をクリアし無事に申請が受理されても以下に該当するものは、書面調査や実地調査等の結果、「不承認」となる可能性があります。①崖地である②地上・地下に有体物が存在している③共益費等の支払を要する土地・森林の伐採後に植栽等の造林が行われていない土地等。

計算

審査手数料・負担金

この相続土地国庫帰属法を利用するには、審査時に1筆あたり14,000円の審査手数料が課されます。複数の筆を纏めて申請しても筆数分の審査手数料が生じるため、審査時に大きな負担となります。また、審査を通過し国庫帰属が認められた場合には、10年分の土地管理費を負担金として納付する必要があります。その種目ごとに、概算額が負担金として課されており、森林を除いた宅地、田畑、雑種地、原野等は、原則的に20万円とされ、面積加算される場合もあります。期限内に納付されない場合は、国庫帰属の承認が失効となります。

悩む人

「相続土地国庫帰属法」という名前を目にすると、「不要な土地は全部引き取ってもらえる」と思われがちですが、実際は上記のように要件がかなり厳しく、これらを充たした土地であれば、第三者への売却も可能なように思えます。

また、管理・保有費用を免れたい所有者に対して、およそ10年分の土地管理費に該当する負担金が生じてしまうことや、申請時に生じる審査手数料が思いのほか高額であることから、総論でのハードルが高く、法整備はされたものの実際に申請される数はいかほどかという点は今後注視が必要かもしれません。

(関係法規:相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第1条「目的」、同法第2条「承認申請」、同法第3条「承認申請等」、同法第5条「承認」、同法第10条「負担金の納付」、同法第13条「承認の取消し等」及び同法律施行令ならびに施行規則)


本コラムの記載は、掲載時点の民法およびその他関係法規(施行予定を含む)に基づくものであり、法律の改正等により変更される場合がございます。また、本コラムはその正確性や確実性を保証するものではありません。最終的な判断はお客様ご自身のご判断でなさるようにお願いします。なお、本コラムの掲載内容は予告なしに変更されることがあります。

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