不動産を保有していると「高齢になり脱大家したい。」「次世代にかかる相続税が心配・・。」「子どもに承継すべき不動産はどれか?」「そもそも後継者がいない。」「法人化したものの廃業すべきか」などと悩んでいる方は少なくありません。
第1部「相続と事業承継とは?」
第2部「相続・事業承継の事前対策は?(個人編)」
第3部「相続・事業承継の事前対策は?(法人編)」
以上3部構成で掲載します。今回は第3部「相続・事業承継の事前対策は?(法人編)」について掲載します。
A:法人では、株価対策及び承継に係る対策が重要となります。
法人の事業承継を考えた場合、後継者に引き継ぐのは自社株式となります。この自社株式の評価額を下げることで、後継者の相続税負担を軽減することが可能となります。
自社株式(非上場)は、会社規模によりますが、原則として類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷で評価します。類似業種比準方式は、上場している同業他社の利益・配当・純資産を自社と比較し、その係数によって相対的に評価する方法です。一般的に、業績が良い会社は評価額が高くなります。純資産価額方式は、自社の資産・負債を相続税評価額に洗い替え、洗い替え後の純資産価額から含み益に対する法人税等相当額を差し引いた金額による評価方法です。こちらは、所有資産が多いほど、評価額が高くなります。
類似業種比準価額を引き下げるためには、配当金を見直したり(上記3要素のうちの配当)、役員報酬を増額する、役員退職金を計上する、引当金や準備金を設定する、掛け金が損金となる生命保険に加入する(同利益及び純資産)等の方法が考えられます。
純資産価額を引き下げるためには、資産負債の構成を見直すことが必要です。含み損のある資産や不良債権を整理したり、キャッシュで不動産を購入して純資産を圧縮することが考えられます。注意点として、株式を評価する時点から3年以内に取得した不動産は、相続税評価額ではなく、時価で評価することと決められています。そのため、不動産を購入してから株価の圧縮効果が出るまで3年間かかりますので、早めに手を打つことが必要となります。
以前は、株主を複数にして、自社株式を分散して引き継ぐ方法が多くみられました。しかし、一度株式が分散してしまうと、集約するのが大変だったり、相続で下の世代に引き継ぐたびに株主間の関係性が薄くなったりすることから、法人の運営上支障が出る可能性があります。従いまして、自社株式を引き継ぐ人は少ない方が後々やりやすいと考えられます。
不動産を引き継ぐ観点からは、個人で所有する不動産を承継する場合と、法人で所有する不動産を株式を通じて承継する場合があります。株式を通じて承継する場合、株式の評価上、不動産の含み益に係る法人税等相当額を控除することができます。そのため、個人から不動産を引き継ぐより財産評価額を下げられる可能性があります。所有不動産について、収益性や管理運営コスト、移転コスト等を検討した上で、個人で所有するもの、法人で所有するものを見直すことも必要です。
また、不動産を複数所有している法人の株式を引き継ぐ場合、一案として、1社の株式を各後継者に分けるのではなく、所有する不動産ごとに誰に承継させるかを決め、その不動産ごとに法人を分け、各後継者にそれぞれの法人の株式を承継させる方法があります。この方法で、株式の分散を防ぎながら、後継者間のバランスをとることも可能となります。
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税務監修
税理士法人エーティーオー財産相談室
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