女性物が中心の低価格衣料品チェーン、フォーエバー21を、アメリカのモール最大手のサイモン・プロパティと投資会社のブルックフィールドと、もう一社の合計3社が共同で買収しました。買収価格は8100万$(82.6億円)の模様です。
ブルックフィールドは2018年にモール第2位のGGPを完全子会社化しています。従って今回の買収はモールのトップ2社が組んだ異例の買収です。なぜこのような買収になったのかを見てみたいと思います。
フォーエバー21は韓国系アメリカ人が1984年に創業、2000年代に急拡大したのですがその後、経営不振に陥り、2019年9月に破産申請しました。この時点では世界で800店舗とされ、日本でも10数店を展開していました。同社は元々は小規模な店舗で営業していたのですが、ある時期からモール内でかなり大きな店舗を構えるようになりました。
特徴はとにかく安いことで、当然薄利で、相当な高回転だったはずです。若い女性の支持を得ていたのはいいのですが、商売の仕方について批判されることが多い会社でした。他社のデザイナーが出した新作をただちにコピーしてイミテーションを格安で売るので、著作権侵害訴訟を数多く抱えていた時期があります。さらに出店しようとするモールに、近傍の同社の店の売上げを実際の3倍と、うその説明をしたとしても訴えられています。
破綻に到った原因はいくつかあります。飽きられたとか、H&Mやザラも似たような安い価格の商品を売り始めたとか、店舗を大きくし過ぎて低価格路線の生命線である商品の回転率が悪くなったというような問題が指摘されています。
一方、アメリカのモールは苦戦中です。モールでは核店舗はデパートが最も多いのですが、倒産や閉店が相次いでいます。専門店の中では店舗面積がとても大きいフォーエバー21に倒産・閉店されてしまうと、後継テナントを見つけてくるのはかなり難しい状況です。
サイモン・プロパティの場合、稼働率は90%とまずまずなのですが、既存のテナントからはモール内の大型テナントや隣近所のテナントが閉店したことを理由とした賃料減額要求を、多数受けています。このような中、フォーエバー21は同社のモールのうち98ヶ所に入居、基本賃料ベースが同社のテナント中で第7位という大口の賃貸先でした。
サイモン・プロパティは時価総額で世界最大級の不動産会社ですし、GGPも非上場にはなりましたが相当巨大なので、フォーエバー21くらいなら買収しても大したことはありません。同社を生かして自社のモール内の店舗だけは閉店させずに継続させようというのが、今回の買収でのモール大手2社の最大の狙いと思われます。
($=102円 2020年3月9日近辺のレート)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清