アメリカや日本での「小売店(実店舗)」の苦戦が伝えられていますが、イギリスのそれもかなり苦しい状況が続いています。主因はアマゾン他のオンライン通販による侵食で、これにブレグジットの不確実性に伴う消費意欲の減退が加わります。
アメリカで起きたシアーズ、トイザらスほかのような大規模倒産は多くはないのですが、大どころでは傘下に有名小売店チェーンを持つアルカディアが行き詰りました。同社の店舗はSC大手のインツに多く出店、インツの家賃売上げの4%を占めています。
小売業の経営破綻がモール会社を直撃した典型的な例です。アルカディアは経営再建のために家賃の引き下げをインツに求めましたが、インツはこれはほかのテナントからの家賃引き下げ要求の連鎖を呼びかねないとし、モールの同業者と手を組んで拒否しました。
しかし家賃を引き下げないとアルカディアは破綻してしまいます。破綻してしまうと家賃が入らなくなり元も子もなくなるので、インツとしては苦しいところです。
日本でも有名な老舗高級百貨店のマークス&スペンサーも株価が1年で4割下落する等、苦戦が長引いています。イギリスの大企業の証は「FTSE100」という株価指数の構成銘柄になっていることですが、同社は先日、これから外されてしまいました。日本の日経平均(日経225)とは異なり、FTSE100はほぼ機械的に時価総額基準で年に4回、リシャッフルされてしまうのです。
マークス&スペンサーの店舗数は約1,000店で、不採算店の閉鎖を進めています。
最も苦境にあるのはいわゆる「ハイ・ストリート」の商店群のようです。ハイ・ストリートというのはある程度以上の規模の商店街のことで「目抜き通り」とも訳されますが、そこまでの規模ではないものも含まれます。
イギリスの500本のハイ・ストリートで今年上半期に閉店した店舗の数は2,868店で、これは毎日16店が閉店になっている勘定です。新たに開店したのは1,643店なので、閉鎖した店舗数に全く追いついていません。さらにこれらは「5店以上のチェーン」について捕捉されたもので、それ以下の零細な商店については分かりません。
これらとは反対に好調なのは、オンライン通販のために用いられる物流倉庫なのですが、こちらにも徐々に変化が起きています。この件はいずれご報告いたします。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清