三井不動産リアルティ REALTY news

企業向け不動産   投資用不動産   賃貸オフィス   成功事例
エリア特集 戦略17分野への官民投資計画

2040年度までに370兆円超の官民投資

 近年、少子高齢化や人手不足が社会問題化し、産業分野での国際競争力の低下が懸念される日本において、高市政権はその打開策と今後の成長戦略として、人工知能(AI)や半導体などの戦略17分野を対象として2040年度までに370兆円超の官民投資を行う計画を策定しました。国内民間投資が大きく誘発されるケースでは2024年度の単年度での国内民間設備投資は230兆円超となり、名目GDPは1,100兆円に近づき、名目GDP成長率は3%台半ばで推移すると試算されています。※1

 これは、日本経済の成長が停滞している現状を需要低下が原因と考えるだけでなく、供給力、研究開発、人材、設備への投資不足によるものとして捉え、AI、半導体、エネルギー、通信、物流、人材をひとつの関連性の強いシステムとして構築しようとするものです。

 計画としては、13事業を先行して選定し、日本の7つのエリアの産業振興計画に落とし込み、それぞれのエリアにおいて経済成長や雇用の創出を拡大しようとするものです。加えて、「国家戦略特区制度」を活用した規制緩和も組み合わせ、社会実装のスムーズな実現を目指し、企業や事業者を中枢に据えつつ関連する企業や大学、研究機関、行政などの組織が密集し、競争と協力を通じて新しい価値やイノベーションを生み出していく産業クラスターを各エリアに形成していきます。

 対象となるエリアでは、新たな人材や企業の集約が進み、良質な雇用の創出や生産労働人口の流入が期待されています。こうした動きが、所得の向上や消費の活性化につながり、更なる投資や経済の発展を生み出す好循環につながることが期待されています。

 それぞれのエリアでは、工場やラボ等の設備インフラの需要にとどまらず、雇用増加による住居や商業・飲食・医療・宿泊・教育等に関連した需要も拡大することが期待されます。

世界エリア別 半導体市場推移

半導体分野、バイオ関連が主要施策

 今回の成長戦略において、最も大きな投資額が予定されているのがAI・半導体分野です。

 この分野の主要な製品・技術は、「フィジカルAI(特にAIロボット)」、「フィジカル・インテリジェント・システムの中核を担う半導体」、そして「バーティカルAI(領域特化型AI)」の3つで構成されています。

 中でも、68兆円という最大規模の投資が計画されている半導体分野は、現在、世界的な覇権争いの渦中にあります。国際競争力の強化を図るため、ラピダスを中心とする北海道、キオクシア岩手を擁する東北、マイクロンの拠点がある広島、そしてTSMC工場を運営するJASMやソニーグループ関連企業が集積し、「シリコンアイランド」とも呼ばれる九州など、日本国内の4つのエリアで半導体クラスターの形成が進められる予定です。

 政府は、半導体を経済安全保障の「心臓部」に位置付けています。いわゆる「勝ち筋」として、ラピダスなどによるロジック半導体の国内量産化と、ロボットが実世界で自律的に活動する「フィジカルAI」の普及を両輪に、設計から製造、実装に至るまでの一貫した国内サプライチェーンを再構築することによって、経済波及効果が443兆円に達すると試算※2しています。

 一方で、巨額の投資に対する費用対効果への懸念に加え、高度人材の確保や電力供給体制の整備など、多くの課題も存在します。最重要かつ高難度の国家プロジェクトである一方、日本産業の将来を大きく左右する分野として注目を集めています。

 次に重点分野として位置付けられているのが、創薬・先端医療分野です。

 iPS細胞をはじめとする基幹技術の研究が盛んな京都大学や大阪大学があり、バイオテクノロジーや再生医療分野に強みを持つ近畿エリアでは、創薬・先端医療クラスターの形成が計画されています。大学やスタートアップの創薬力に加え、再生医療、AI創薬、手術支援ロボットなどの先端技術を強化する方向性の上で、日本発の新薬創出を促進し、「ドラッグ・ロス(海外で承認された薬が日本では利用できない問題)」の解消を目指しています。

 また、阪神・淡路大震災以降、神戸市が推進してきた「神戸医療産業都市」に代表される産学官連携の実績や、高齢化社会の進行に伴って蓄積された豊富な医療データは、大きな強みとなっています。その一方で、薬価制度や規制対応の負担、研究開発投資の回収期間の長さなどが課題として残されています。

 近接分野であるバイオ関連産業を含めると、投資規模は100兆円を超える計画となっており、産学官のみならず、地域や企業間を含めた柔軟かつ積極的な連携体制の構築が不可欠です。

 このほかにも、成田市を中心とする千葉県エリアでは航空関連産業クラスター、愛媛県今治市を含む瀬戸内エリアでは造船関連産業クラスターの形成が構想されています。これらは、既存の産業集積や地域特性を活かしながら成長戦略を推進するものであり、それぞれの地域が持つ強みを基盤とした持続的な産業振興を目指しています。

 このような「戦略産業クラスター計画」と並行して、都道府県などが主導する「地域産業クラスター計画」や、県・市町村などの産地が中心となる「地場産業成長プラン」の推進も予定されており、こうした施策の連携により、多層的な地域産業振興がより効果的に進展することが期待されています。

※1:出所 
日本経済新聞 2026年6月24日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA241PA0U6A620C2000000/
※2:出所 
共同通信47NEWS 2026年6月24日 掲載
https://www.47news.jp/14520236.html
成長分野産業クラスター
本編はこちら
REALTY PRESS
REALTY INSIGHT
CRE戦略、不動産M&A、不動産査定に、プロの力を。不動産コンサルティングはこちら