海外企業による日本への投資(対日直接投資)が拡大しています。円安の進行を背景として、日本企業や不動産などの資産価格がドル建てで相対的に割安となり、海外企業が従来よりも少ない資金負担で大規模な投資や企業買収を行えるようになったことがベースとなっています。
その投資額はすでに2025年には61兆円を超えていますが、日本政府も積極的な投資誘致政策を展開しており、対日直接投資残高については、2030年までに120兆円へ拡大する目標※1を掲げている状況です。
こうした投資拡大の背景には、外資系企業の明確な戦略があります。
第一に、生成AIの普及に伴いアジア太平洋地域におけるデータ需要が急増していることへの対応、第二には、日本の法規制や安定した社会基盤を活用し、重要データを安全に保管・管理したいというニーズです。近年は「Data Sovereignty(データ主権)」が重要視されており、データを日本国内に保管し、安定した日本の法制度の下で管理できるということ自体が、日本への投資を促す大きな要因となっています。
近年の代表的なインバウンドの投資事例としては、台湾のTSMCによる熊本県のJASMプロジェクト(総投資額約3兆円規模)や、米国のMicron Technologyによる広島工場への投資(約1兆5,000億円)があります。今後の予定としてはMicrosoftやAWS(Amazon Web Services)による大規模投資が注目されています。
Microsoftは日本国内のAI・クラウド基盤強化に約4,400億円規模の投資を発表※2しており、AWSは2027年までに約2兆2,600億円を投資する計画を公表※3しています。加えてGoogleやOracleも日本国内におけるデータセンター等への投資方針を示しており、具体的な投資額は公表されていないものの、数千億円から数兆円規模に達する可能性があるとみられています。
そうした状況下、秋田市に建設される日本最大級の人工知能(AI)向けデータセンターに対して、アラブ首長国連邦(UAE)などが2兆円規模になる投資をすることが報じられ※4ています。
外資系企業が日本への投資を決定する要因としては、
1.生成AIの普及によってデータセンターの整備が急務となっている。
2.日本はアジア最大級のデータ消費市場である。
3.データ主権への対応や情報保護の観点から、日本国内にデータを保持したいという需要が高まっている。
4.米中対立や地政学リスクの高まりを受け、企業が重要インフラやデータの保管拠点を分散させる動きを強めている。
5.通信網や電力網などの社会インフラの信頼性が高い。
などが挙げられます。
現在、拡大しつつある投資項目はデータセンター開発が中心になっていますが、一方でデータセンター建設には大量の電力や冷却用水を必要とし、電力確保、水源確保、送電網整備などや周辺地域との調整が課題となっています。また、用地確保も次第に難しくなっており、今後は用地取得コストの上昇や開発期間の長期化が予想されます。
その他の不動産分野における対日直接投資も活発な状況が継続しています。不動産は円安の恩恵を受けやすく、海外投資家から見た割安感があることから、投資ファンドを中心に積極的な投資が行われています。代表的な投資家としては、Blackstone、KKR、GIC、Brookfieldなどが挙げられ、案件ごとに数百億円から数千億円規模の投資を実施しています。
その投資対象はデータセンター用地や関連インフラ以外にも、オフィスビルやホテル、物流施設にまで広がっていますが、当面は半導体関連やデータセンター関連の需要が旺盛であり、用地やデジタルインフラ構築に向けた投資が市場を牽引していくことが予想されます。