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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

CRE戦略 企業不動産の最適化と営業拠点の再編|第4部 アクティビストの提案
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企業不動産の最適化と営業拠点の再編

第1部 CRE戦略推進のきっかけ

第2部 営業拠点の統合、分散

第3部 遊休資産の活用

第4部 アクティビストの提案


村木 信爾

不動産鑑定士

明治大学グローバル・ビジネス研究科 兼任講師

MBA(米国ワシントン大学ビジネススクール)


第4部 アクティビストの提案

アクティビストの台頭

 近年、外資系プライベートエクイティファンド(PE)などが株主になり、経営者に経営改善策としてCRE戦略の再構築を提案して、売却・リースバック・時価開示を迫ることが見られます。このような株主は「アクティビスト」と呼ばれます。2023年の東京証券取引所の「PBR1倍割れ改善要請」がこの動きの追い風になっています。

 アクティビストの提案が非合理なものであるかというと、必ずしもそうではなく、CRE戦略を策定し、含み益を顕在化したうえで、非中核資産を整理して資本効率を改善し、採算性の高い事業への投資資金を捻出して、ROICの改善、企業価値向上を目指すべきという理にかなった提案が見られます。

 このようなアクティビストと経営者の中長期の経営方針およびそれにともなうCRE戦略が一致していれば問題は少ないのですが、アクティビストの意向と経営者の経営戦略との齟齬が生じる可能性があります。例えば、経営者が不動産事業を本業の1つとして育てようとしているときに、アクティビストがその中核となる優良な不動産の売却を迫るような場合です。アクティビストの提案を受ける企業は、本業の業績が下降し、イノベーションの必要性があり、かつ不動産の時価開示が不十分な場合があります。

企業不動産の時価評価と活用

【事例】阪神電気鉄道

 2006年5月10日、村上ファンドの保有株式が46.82%を超えたことにより、村上ファンドから提案を受けました。西梅田、阪神甲子園球場などの沿線の自社保有不動産が簿価で評価されバランスシートに計上されていたため、実際の資産価値に比べて株価が割安と判断し、会社の株式を大量に取得した上で経営陣に対して資産価値に見合う株価になるような施策を求めたもので、不動産事業を鉄道事業から分離する案を含む外部化を提案したといわれています。2006年10月に同業の阪急ホールディングスが阪神電気鉄道を完全子会社化して経営統合しました。

【事例】東京ガス

 米ヘッジファンドであるエリオットが、2024年11月に東京ガスの株式5%超を保有したことが公表されました。不動産ポートフォリオ(新宿パークタワーや豊洲の大規模土地等)の含み益が大きく1兆円以上の価値があるとエリオットは独自に試算し、不動産ポートフォリオの再評価、本業に関係のない非中核事業として売却、資産売却による株主還元の強化、ROEの改善を求めました。次期中期経営計画(2026-2028年度)において不動産を含む資産・事業を3,000億円規模で売却する方針を示しました。

【事例】サッポロホールディングス

 シンガポールの投資ファンド3D Investment Partners Pte. Ltd(創業者は日本人)は、サッポロホールディングスに対して経営改革を求めました。同社の不動産事業は安定した収益を生んでいましたが、本業であるビール飲料・食品事業の収益性を覆い隠し経営改革遅れにつながっていると指摘しました。これらを背景に、同社は、恵比寿ガーデンプレイスなどを保有しているサッポロ不動産開発(同社が全額出資している子会社)の株式をKKR(アメリカ)とPAG(アジア系)へ段階的売却(2026~2029年)することになり、売却額は借入額を含む企業価値ベースで約4,770億円になります。(注)。同社は、不動産事業の切り離しにより資産を創出し、酒類・食品事業といった成長領域への再配分を進め、競争力強化を優先する考えです。

(注)恵比寿ガーデンプレイスの一部はグループ内に移管され、その後売却されています。

【事例】日本郵政

 日本郵政も英国のファンドPalliser Capitalから不動産価値の顕在化の提案を受けています。約24,000局の郵便局局舎、社宅等全国に企業不動産を数多く保有しており、保有資産の効率化、不動産事業の収益性化、低利用資産の売却・再開発が求められています。

【事例】高島屋

 2025年村上世彰氏の長女・野村絢氏が高島屋の株を 6.55%まで買い増し、さらに2026年1月の保有割合は8.22%となりました。アクティビストとして、ノンコア資産の売却や株主還元などを提案しています。これに対し高島屋は200億円規模の自社株買い、配当増額に加え、不動産についても選択と集中を進め、2025年6月、賃貸用不動産のリバージュ品川を売却し約125億円の譲渡益を得るなど、保有不動産の売却を進めています。中期経営計画(2024~2026年度)で、ROIC経営の強化(資本効率の改善)、財務強化と株主還元の拡大、まちづくり戦略の推進(商業開発の選択と集中)を明確に掲げ、CRE戦略としての資産売却により、百貨店事業の構造改革、海外(特にベトナム)への投資、株主還元強化等に役立てることを目指しています。

 2008年に国土交通省が「CRE戦略実践するためのガイドライン」「CRE戦略実践するための手引き(資料集:初版2008年)」を公表してから、2026年で18年になりますが、この間企業の多くはCRE戦略を実践しこれを深めてきました。しかし、それでは十分とはいえず、アクティビストの動きによって、特に2023年の東証による「PBR1倍問題」提起以降、CRE戦略の策定や実践を加速させてきたといえます。しかし、中堅中小企業ではまだまだCRE戦略は浸透していない場合があります。大企業、中堅中小企業の別、業種・業態を問わず、経営者は、平常時にしっかりしたCRE戦略を立てておく必要があります。

※出所:村木信爾「企業不動産(CRE)戦略とESG投資」(2026年 金融財政事情研究所)

※出所:合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(編著)「CRE戦略実践のために2010改訂版」(2010年 住宅新報社)

※出所:東京ガス「2026-2028年度中期経営計画」2025年

※出所:3D Investment Partners Pte. Ltd「サッポロホールディングス株式会社が抱える課題について」2023年

※出所:百嶋徹「企業不動産(CRE)戦略が本格化しない背景とは?」ニッセイ基礎研究所(2019年3月29日『基礎研レポート』)

※出所:日経ムック「CRE社会価値を創出する企業不動産戦略」


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