第1部 CRE戦略推進のきっかけ
第2部 営業拠点の統合、分散
第3部 遊休資産の活用
第4部 アクティビストの提案
村木 信爾
不動産鑑定士
明治大学グローバル・ビジネス研究科 兼任講師
MBA(米国ワシントン大学ビジネススクール)
海外への生産拠点の移転や技術革新にともない販売する製品、サービスの大きな変化による事業構造の転換によって、従来の好立地にある生産施設等が不要になり、その立地において不動産事業を開始することや、売却してその売却資金を新事業に投入する企業があります。少子化、高齢化による人口減少により、あるいは、技術革新による事業構造の大きな変化によって、鉄道、新聞、百貨店、放送、出版といった業界の一部では、本業における事業環境が厳しくなっているといわれています。
これらの業界では、売上高や営業収益では、依然として本業が不動産事業を上回っている企業が多いものの、利益では、不動産事業が従来の「本業」を上回るケースも少なくありません。従来の「本業」の定義が変化してきている企業です。
本業で用いていた土地の有効活用として、不動産開発業をはじめ、不動産賃貸業を一つの柱に据えることは老舗企業にとって「生き残り戦略」といえました。しかし、アクティビストからは、不要な不動産のみならず、これから収益の柱にしようとしている優良不動産も売却を検討するように提案される場合があります。
【事例】日本製鉄
大阪府堺市臨海部にあった旧新日本製鐵堺製鐵所の高炉休止・事業所縮小(1990年)によって生じた遊休地を開発し、2006年3月21日に、映画館など複合娯楽施設である堺浜えんため館(2026年3月22日閉館)と堺浜楽天温泉祥福からなる商業施設の堺浜シーサイドステージを開業しました。
【事例】パナソニックホールディングス
パナソニックは、1961年に当時の松下電器産業が初めて関東に進出した神奈川県藤沢工場の跡地を活用し、「パナソニックの省エネ・創エネ・畜エネ技術を活用した環境創造まちづくり」という基本理念のもと、2014年11月、東京ドーム4個分(約19ヘクタール)の敷地に約1,000戸の戸建住宅中心の街づくりプロジェクト、Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)を開発しました。
パナソニックを含めたコンソーシアムは現在、全32団体で、パートナー企業のうち9社が共同で「Fujisawa SST マネジメント株式会社」を設立し、エネルギー、セキュリティ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティの各分野で秀でた企業とパートナーシップを結び、先端のテクノロジーを投入しながら協業を進めています。
新規事業に進出する際には自社にとっての「遊休資産」を売却し、営業資産に買い替える場合があります。
【事例】東芝
2007年に中央区銀座5丁目の創業地の一つのビルを約1,610億円で東急不動産に売却し、その資金を利用して、ポートフォリオの入れ替えのため、ソニーの高性能半導体の生産設備を購入(約900億円)したといわれています。また、2008年7月に東芝不動産の株式65%を野村不動産ホールディングスに譲渡し、保有不動産の価値最大化を図りました。
なお、2025年には、固定費の削減、意思決定のスピード向上、研究開発との連携強化が主な目的で東京都港区浜松町の本社(賃借)を川崎本社(スマートコミュニティセンター)に移転をすすめました。
【事例】全日空
2007年のリーマンショック前に、溜池山王のANAインターコンチネンタルホテル東京(旧・東京全日空ホテル)ほか直営の13ホテルを米モルガン・スタンレーグループに売却し、約2,813億円のキャッシュを得て、新しい省燃費の機材に買い替え、財務体質を改善しました。
ANAは現在海外拠点の床面積、コスト、契約満了日など不動産情報を本社で一元的に管理し、コストの最適化、品質管理を行っています。
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