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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

CRE戦略 企業不動産の最適化と営業拠点の再編|第1部 CRE戦略推進のきっかけ
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企業不動産の最適化と営業拠点の再編

第1部 CRE戦略推進のきっかけ

第2部 営業拠点の統合、分散

第3部 遊休資産の活用

第4部 アクティビストの提案


村木 信爾

不動産鑑定士

明治大学グローバル・ビジネス研究科 兼任講師

MBA(米国ワシントン大学ビジネススクール)


第1部 CRE戦略推進のきっかけ

CRE戦略推進のきっかけ

1.建物の老朽化、自然災害によるリスクへの対応

 老朽化により耐震性が確保できていない場合など、人命に関わるものは特にBCP(事業継続計画)の観点から、建替えや移転が促進されます。

 民法717条は、土地の工作物の設置・保存の瑕疵がある場合に、占有者および所有者としての責任を定めています。また、賃借人として、危険なビルに入居し従業員が被災した場合、従業員への安全配慮義務違反を問われるリスクもあります。

2.本業の衰退、イノベーションの必要性による事業戦略の転換

 人口減少、AI、ICTの発達、グローバル化、SDGsやESG投資など、社会、経済の大きな変化の中で、多くの企業において従来のビジネスモデルが陳腐化し、イノベーションが求められています。それを乗り越える新しい経営戦略にともない、本社、営業拠点、工場等の統合、分散や新規事業進出のための遊休資産の活用(売却も含む)、新規取得がCRE戦略として求められています。

3.アクティビストの提案

 近年の重要なトピックスとしては、アクティビストの提案による企業の資産の合理化が挙げられます。アクティビストは、一定数の株式を保有し、経営陣に事業再編や株主還元(配当・自社株買い)を提案して企業価値向上と自らの利益を目指す投資家です。具体的には、事業売却、経営陣の刷新等を要求し、その企業の経営に影響力をおよぼします。CRE戦略推進のきっかけとして、株主の立場からの要請が、戦略の検討や実行を加速させる要因になることが特徴です。

4.働き方の変化、新しいワークプレイス取得の必要性

 SDGsやESG投資として、例えば、CO2排出削減のための床面積縮小・高効率ビル、省エネオフィスへの移転などESG投資の「E:環境(Environment)」項目や、「S:社会(Social)」項目に関連する、労働環境、働き方の変化、新しいワークプレイス取得の必要性は、CRE戦略推進のきっかけの1つです。

5.再開発

 再開発が契機となり、企業がCRE戦略を推進することがあります。

※BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)企業や組織が自然災害・大規模火災・システム障害・テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合でも、重要な事業を止めず、またはできる限り早く復旧させるための計画のこと。

※ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)PC、インターネット、通信技術を用いて情報を「伝え、つなぐ」技術の総称。

※SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)

※ESG投資とは、企業の財務情報だけでなく、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)への取り組みも考慮して行う投資のこと。

※民法第717条

第1項 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

第2項 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

第3項 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

営業拠点の移転の課題

1.現地建替えか、移転か

 現所在地に建て替えるか、移転するかという問題があります。その立地で建物に求められる役割、機能を考慮し、本社が創業地であるという諸事情をふまえて、現地で建替えするか、別の立地に移転するかが決定されます。現地建替えの場合は、一次移転先への引っ越しと完成後の引っ越しの2回の移転が必要になりますが、単なる移転の場合は、引っ越しが一回で済みます。

2.移転後の売却と有効活用

 移転後、移転元の企業不動産を売却するかどうかの判断もあります。それが好立地にあるのであれば賃貸ビルを建設しプロとして不動産経営を行うという選択もあります。

3.テナントの立退き

 営業拠点などの企業不動産を建て替える場合、その企業不動産にテナントがいる場合は、テナントの立退きを検討することがあります。テナントの立退きは、借地借家法第28条により、「正当事由」がなければ認められないのですが、裁判で正当事由の有無は、賃貸人・賃借人双方の事情を総合的に考慮して判断され、老朽化した危険な建物の場合や再開発計画、立退料の支払いがある場合は、正当事由を補強する要素として考慮されることがあります。とはいえ、テナント立退きは企業にとって負担やリスクがあります。立退きは時間もかかるため、企業は、テナントの賃貸借契約を買主に承継するオーナーチェンジという形で、再開発業者に早期売却するケースも多く見られます。

※借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並び建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

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