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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

CRE戦略 CRE戦略の進化|第1部 経営上の投資用不動産の位置づけ
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CRE戦略の進化

第1部 経営上の投資用不動産の位置づけ

第2部 自然災害と所有者責任

第3部 AI・ACTの発達、利用するデータの多様化

第4部 CREにおけるESG・SDGs


村木 信爾

不動産鑑定士

明治大学グローバル・ビジネス研究科 兼任講師

MBA(米国ワシントン大学ビジネススクール)


第1部 経営上の投資用不動産の位置づけ

 CRE戦略の議論をするとき、「CRE」に投資用不動産を含める考え方と含めない考え方がありますが、日本では投資用不動産もCREに含めることが多いので、本稿でもそれに従います。

事業環境の変化と不動産事業との親和性の変化

 近年の社会、経済の大きな変化により、従来の「本業」が大きく変化してきている企業があります。少子高齢化による人口減少によって売上げが必然的に減少すると予測される企業(鉄道会社、新聞社等)、あるいは、技術革新によって、従来の設備、土地、建物が不要になった企業(大手通信業、鉄鋼業等)、また、消費者行動の変化により収益を伸ばすことが難しくなった業界で、かつ、好立地の不動産を持っている企業(百貨店、SCなどの商業施設等)などです。

 鉄道事業のように創業時から本業と不動産事業との親和性の高い事業はありますが、近年では一般企業においても両者の関係性が変化してきています。繊維、ガラス、化学、鉄鋼などの素材業界や大手通信企業では、この変化を背景に、社内やグループ内に不動産開発、管理運営を担う部門を設ける企業が増加しています。さらに、不要となった生産工場の敷地をマンション用地へ利活用する動きも広がっています。たとえば、日鉄興和不動産やNTT都市開発などはその代表的な不動産開発会社として挙げられます。これらの企業で従来の「本業」と異なる不動産業を行うことは経営戦略の大きな転換を意味します。

「本業」、「コアビジネス」の再定義と不動産保有のあり方

 従来のコアビジネスで不要になった保有不動産を、イノベーションによって新しいコアビジネスで利用できるのであれば、それに越したことはありませんが、その保有不動産が好立地にあり他の用途で利用できるものであれば、これを売却して他のビジネスにその資金を使うことや、その不動産を利用して不動産投資事業を始めることも選択肢になります。ただし、優良な不動産を保有しているという理由だけでは、不動産投資事業を始めるべきではありません。まず企業経営にとっての「本業」「コアビジネス」とは何かを再定義する必要があります。

 不動産事業を行うことが、本業のコア事業とシナジーがあるか、事業ポートフォリオとして適切かどうかを検討し、その会社の経営戦略において不動産投資事業をコア事業の一つとして位置づけ、「プロとして」不動産事業を行う、という意識でその体制を構築することができれば、不動産事業を本業の一つとしてみてよいと思われます。たとえば、遊休地に商業施設を建てて賃貸する場合には、自らプロとしてその事業採算を検討すべきであり、信頼のおけるデベロッパーと組める場合でも事業判断を任せきりにするのであれば、売却の道を選んだほうがよい場合があります。

 右肩上がりのマーケットにおいては、不動産ビジネスは、その他の「本業」における危機に対するリスクヘッジの役割を果たし、収益の安定に寄与しました。しかし、バブル期に副業として行った無謀な借金による投資用物件の購入により、バブル崩壊後倒産に至った企業は多く、これは現在の不動産投資事業者への大きな教訓です。

投資方針・投資基準の策定

 不動産投資事業はプロとして行うべきですが、現実には、社内の人材に不動産業務のプロがいることは少なく、また、事業承継により不動産知識、経験がなくても、家族で先代から賃貸不動産を引き継いで、管理、運営していかざるを得ないケースも多くあります。保有不動産、運用資金は多くても不動産投資のノウハウに乏しい人の場合は、不動産仲介業者等から多くの投資用物件を紹介されても、自社の投資方針や、判断基準がなければ、投資判断に困ることになります。それを克服するために、経営者は不動産投資の基礎を学び、かつ信頼のおける不動産コンサルタントとともに、自社の経営方針、財務体質などをふまえた不動産投資方針や、判断基準をつくる必要があります。

 投資方針とは、マーケット状況などの外部環境、自社の事業、予算、人員体制などの内部環境をふまえて、ハイリスクハイリターン型投資、あるいはローリスクローリターン型投資など、どのようなリスクをとるのか基本方針を決め、具体的にマンション、ビル、商業施設などのアセットタイプ、投資エリア、投資対象の利回り、築年数、建物構造などの基準や、管理、運営方針などを決めていく方針を意味します。

不動産コンサルタントの活用

 ここでの不動産コンサルタントとは、売買案件、賃貸案件を紹介するだけの営業マンではなく、顧客の立場になって、顧客の言葉の真意をくみ取り、できるだけ定量化した投資方針や判断基準案を作成し、顧客が判断するための情報や判断のプロセスを整理して、実際に顧客の取引実行を支援できる人です。ときには、投資の可能性がある案件について分析したうえで、当該リスクをとるべきではないと助言することや、現存の投資から撤退することをアドバイスできる人でもあります。彼らは、不動産の売却により企業の負債を返済しROAなどの財務指標の改善を図ったり、資産や収益構造の最適化の観点から不動産売却によるオフバランスやセール&リースバックの提案を行うこともあります。

 信頼できる不動産コンサルタントに出会えず、かつ経営者が不動産への関与を望まず、不動産投資事業を自社の柱にしようという熱意や思い入れがない企業の場合、不動産事業に踏み込むよりも、J-REITや株式投資等のほうが適しているといえるでしょう。

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