ニュース等でも報道されているように、新築分譲マンションの価格は上昇傾向が継続し、その要因については、用地取得価格と建築費の上昇に加えて、供給の少なさが大きく影響していると考えられます。
不動産経済研究所が2024年末に発表した2025年の新築マンション予測では、首都圏は13%増の2万6,000戸の供給で、特に東京23区での販売が大きく伸びるとしていましたが、結果的にはコロナ禍後の特需となった2021年以降の供給が減り続けている流れを脱せず、2025年についても過去最少であった2024年と同等の2万3,000戸台の供給に留まるとの予測※1になっています。
全体的な供給は減少していますが、市場には希少性の高い都心立地の供給が増えたため、その点も販売価格の上昇要因になっています。しかし、価格の上昇にもかかわらず最近の市場では、売れ行きの悪い物件はあまり見かけなくなり、市場全体で見れば好調さを感じられる状態といえるようです。
下のグラフからは、2016年以降、新規発売戸数を既存物件の成約戸数が上回る状態になり、2024年にはその戸数差が17,497戸にまで広がっていることがわかります。2024年の新規物件と既存物件の販売坪単価についても、共に2014年対比で173%と184%と大きく伸びていて、強い需要があると判断できます。
供給側から見れば、“出せば売れる”いわゆる売り手市場であるにもかかわらず、「用地取得が進まない」ため、需要を充足する「新規開発ができない」という状態が続いています。
この新築分譲マンションの価格高騰は、賃貸住宅市場にも波及しており、東京23区の賃料相場は2023年2月に4,000円/m2を突破すると上昇基調を継続し、2025年10月では4,866円/m2にまで達しています。※2
また、東京23区の賃貸住宅の空室率についても、2024年7月に10%を割り込んで以来下降基調が続き、2025年8月時点では9.04%まで下がって※3、住宅マーケットは分譲・賃貸とも需要が供給に先行している状態が窺えます。
分譲マンションの用地取得に際しては、賃貸マンションなどと競合することも多くなっており、入札などでは用地価格の上昇を加味した価格に引き上げざるを得ない状況は今後も続くと考えられます。今後の開発には、ターゲット層の見極めを含めた販売アプローチと効果的な用地の取得がこれまで以上に必要になってくるでしょう。
また、ニュース等の報道でもあるように、マンション価格の高騰要因として「外国人のマンション取得の増加」と「短期の売り買い(転売)の多さ」があるとされた問題で、国土交通省が2025年1~6月に新築マンションを取得した人を対象に、「海外に住所がある人(外国人)の割合」と、「取得から1年以内の短期に売買された住宅の割合」を算出※4しました。
その結果、「外国人の割合」は、東京23区平均:3.5%、大阪市:4.3%、京都市:2.5%で、東京都心6区:7.5%のように高い地域はあるものの、一概に外国人による購入が価格上昇の主要因とは言い切れない様子です。その一方で、「短期売買住宅(転売)の割合」は、東京23区:9.3%、神戸市:12.1%、大阪市:7.2%でした。
その他、建築費の高騰や、分譲マンションが相続税評価額圧縮効果を得られるとして富裕層が相続税対策のために取得するケースもあり、これらも価格上昇の要因とされています。
※1 出所 首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年11月20日リリース
※2 出所 東京カンテイ プレスリリース2025年11月17日
※3 出所 株式会社タス 賃貸住宅市場レポート2025年11月号
※4 出所 2025年11月25日 国土交通省 発表
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