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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

CRE戦略 CRE戦略の基礎|第3部 市場価値と使用価値
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CRE戦略の基礎

第1部 CRE戦略の7つの視点

第2部 立地戦略

第3部 市場価値と使用価値

第4部 所有か賃貸か


村木 信爾

不動産鑑定士

明治大学グローバル・ビジネス研究科 兼任講師

MBA(米国ワシントン大学ビジネススクール)


第3部 市場価値と使用価値

(1)CRE戦略において求める保有不動産の価値

 市場価値は、基本的に第三者に売却する際の価値ですが、CRE戦略において特に重要なのは、当該企業にとっての不動産の使用価値です。それは企業の経営戦略や事業環境、特殊事情等を踏まえたものであり、また、単独の不動産として求められるものではなく、少なくとも一つの事業、プロジェクト、プロダクトライン、あるいは企業全体のなかで収益にどのような貢献しているのかという観点からみた価値です。

(2)使用価値を測るための検討事項

 使用価値は、企業の事業に対する貢献度という観点で検討します。

1. 中長期経営戦略、マーケティング戦略に基づく中長期的な会社の業績見通し

 企業の中長期経営計画など、経営戦略、事業戦略との整合性を検討したうえで、それぞれの不動産をどのようなポリシーのもとで、どこに立地し、保有することが必要か、現存の不動産も要不要を判断します。今後コア事業に成長させようとしている事業に資する不動産はプラスの評価、逆に撤退を決めている事業に利用されている不動産はマイナスの評価がされます。但し、非常に業績が悪化している企業の場合は選択の余地がなく、事業継続に必要な最低限のCRE以外はリストラ候補です。

2. 整理統合の必要性

 各保有不動産を整理、統合する際において、必要性、可能性の観点で、全CREを見直し、要不要を検討します。

3. 特殊性、希少性

 ある立地において、一般の使用方法と比べて、特殊性が大きく、希少性がある不動産は事業貢献度が高いといえます。例えば、小規模ビルが多い立地でのワンフロアが大きい面積のオフィススペースや、非常に長い製造ラインを持つ工場用地では敷地の長さが重要で、希少性が大きいと言えます。

4. 所有と賃借の選択の余地があるか

 所有している不動産を売却した場合に、同じ目的が達せられる賃借物件を容易に調達することが容易かどうか検討し、できないような不動産であれば事業に対する貢献度は高いといえます。

5. 不動産の象徴性、ブランド価値

 銀座や表参道の店舗は、所有、賃借に関わらず収益性だけの観点からみると非合理的なことが多いのですが、それでもブランド企業が出店したがるのは、その土地に出店することに、販売する商品やサービスが高級品であるという象徴性を発信することで、ブランド価値が高まるとみているからです。また、建物の形状、高級品の店舗だけではなくコンサルティングファーム、法律事務所など高額のサービス業においても、立地やエントランス、内装、外装によって、高級感、信頼性などのブランド価値を求めています。

 以上、企業不動産(CRE)の使用価値を決めるにあたっては、当該企業の経営者、CRE担当者は、外部の不動産サービスベンダーとの綿密なコミュニケーションによって検討することが必要と思われます。

(3)使用価値の定量化の一例

 使用価値を定量化することは難しいのですが、その方法の一例を下記に示します。

 ある企業にA、B、Cの3つの事業部があり、A事業部で使われているP不動産があるとします。このP不動産の使用価値(事業価値)を簡易的に求める方法として以下の方法が考えられます。ただし、使用価値の厳密な数字を求めることは、評価の精度を考えると大きな意味はないとも考えられますが、経営戦略上は意味があると思われます。

1. 収益還元法で会社全体の企業価値を求めます。

2. 1.で求めた会社全体の企業価値からA事業部の事業価値を求めます。分配方法は、管理会計により行いますが、事業部別の売上、利益、従業員数などの割合等によることもできます(ここでは本社経費など全社共通のコストは考慮済とします)。

3. A事業部の事業価値から、A事業部に属する不動産全体の価値を求めます。配分方法は、貸借対象表におけるA事業部の土地・建物・設備/A事業部の資産全体とします(できれば時価ベースに変換して割合を求めます)。

4. A事業部全体の土地・建物・設備の価値から、P不動産の価値(設備込み)を求めます。配分方法は、P不動産の固定資産税評価額/A事業部全体の不動産の固定資産税評価額とします。工場の場合等、機械設備があることが前提の価値なので、これを含めた価値です。

(注)売買や、M&Aが行われる際の動産の市場価値は、その機械設備等をそのまま買主が使うならば、機械設備の簿価を加えた価格、買主が利用しないと想定される場合その機械設備が外部マーケットで売却できるならばその価格、そうでなければ、除却資産としての査定価格とします。

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