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今回は「西新宿」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

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世界を視野に、ステップアップする西新宿

東京のオフィス街を牽引してきた西新宿

 新宿駅西口エリア一帯の西新宿という地名には、東京都庁舎を始めとする高層建造物が集中している一画という印象が強くあります。行政区画としての「西新宿」は一丁目から八丁目で構成されていますが、ここには100m以上の高層建造物が実に40棟※1も集中しています。

 西新宿がこうした特性を持つにいたる契機としては、1956年に策定された首都東京の再編戦略としての首都圏整備計画において、新宿・渋谷・池袋の3地区が副都心に指定され、それに続いて1960年に決定された新宿副都心計画があげられるでしょう。

 新宿副都心計画とは、千代田・港・中央の都心3区に集中した都市機能を分散・緩和し、新宿地区にビジネスセンターとして副都心を建設することを目的としたもので、新宿駅の西側にあった淀橋浄水場の跡地約34haを中心とする約96haに、指定容積率1000%に加え特定街区と呼ばれる制度を適用し、公開空地を確保する代わりに容積率の割増し等の特例を設けたものでした。

 以後、京王プラザホテル(1971年)、新宿住友ビル・KDDIビル・新宿三井ビル(1974年)と相次いで高層ビルが進出し、1991年には東京都庁舎が竣工し、一帯は首都東京を代表する高層オフィス街の様相を調えたエリアとなりました。

 21世紀を迎えると、バブル後の低迷期が続いた日本経済を再生するため、また世界的な都市間競争が激化する中で、首都東京の魅力向上を視野に入れた回生策が模索されます。

 「都市再生特別措置法」が施行され、東京都においては港区、東京駅周辺、臨海エリアなど7地域、計約2,400haが「都市再生緊急整備地域」に指定され、それぞれのエリアで大規模再開発が推進されることになりました。

 そうした状況下、西新宿エリアは築30年以上経過した高層オフィスビルが多く、競争力を高めてきた他の都心4区と比較すると新規供給も活発とは言えない状況が続いていますが、供給が低調ながらも需要は底堅く、新宿区の空室率に関しては2014年以降、ほぼ都心5区の水準で推移し、西新宿エリアのオフィス賃料に関しても都心5区の平均値と大きな差異は無い推移を見せています。

新宿区 ビル空室率 都心5区との対比
都心5区 中型ビル以上の新規供給面積
西新宿エリア オフィス募集賃料 都心5区との対比

※1:出所 超高層ビル・超高層マンションの『BLUE STYLE COM』
https://www.blue-style.com/area/tokyo/shinjyuku/

国際交流拠点への取組み

 インバウンド客の多くが訪れ、国際都市としてさらなる地位向上を目指すための、新宿駅近辺のポテンシャルアップに関しては、現状の駅の在り方の見直しも検討されています。

 世界一利用者が多い駅※2ではありますが、駅を挟んだ東西間の移動動線の弱さ、人の滞留空間の不足、駅や駅ビルの老朽化といったことが改善課題として挙げられています。

 東京都と新宿区は2018年3月に、「新宿の拠点再整備方針」を策定し、駅・駅前広場・駅ビル等を一体的に再編整備し、人々の交流が生まれる歩行者ネットワークを構築する「新宿グランドターミナル構想」の実現を目指しています。これに基づき、現在小田急電鉄が中核となり進められている地上48階の駅ビルの建替えを機に、駅の東西のまちをつなぐ線路上空デッキの新設や歩行者優先の駅前広場の再構成が進められます。

 また、再整備の進む新宿西口駅前の顔として、敷地面積約6,300m2・地上23階の西新宿一丁目地区プロジェクトが進行しつつあり、周辺の動線のアクセントとしての景観の形成を目指しています。

 駅周辺における地域全体として質の高い国際交流拠点を形成する目的の下、「西新宿グランドモール」という高層ビル街の奥に広がる新宿中央公園と新宿駅との間のウオーカブル環境を整備し、回遊性とにぎわいを創出する計画が策定されました。

 具体的には、新宿駅と新宿中央公園との間を結ぶ4号街路を骨格軸とし、車社会から人中心のまちづくりへの転換が求められているニーズに応え、車道を狭めて歩道を広く設けて交流・滞在の場とすると同時に、道路に面する超高層ビルの低層部や足元のスペースをも一体的に整備します。

 この街区は街路空間や公開空地などのオープンスペースが全体の約80%を占めるものの、地上と地下と地盤が二層構造となっていることで人々の回遊性が妨げられ、賑わいが形成しにくくなっていました。

 そこで、公開空地や建物ロビー空間での賑わいを振興する施策として、新宿住友ビルでは機能更新・設備リニューアルに併せて、MICE施設の「新宿住友ホール」や日本最大級の全天候型屋内アトリウム「三角広場」を2020年6月1日に開業しました。

 特定街区ならではの様々な規制に対応しつつ、地震などの有事が起こった際の帰宅困難者の一時滞在施設ともなることなどを国家戦略特区の枠組みとして活用し、特定街区の都市計画を変更することで20年越しに実現させたもので、耐震性強化や防災対応力をも兼ね備え、築年の進んだ高層ビルのスクラップアンドビルドに拠らない大規模リニューアルの好例となっています。

 また、西新宿グランドモール構想の一方の拠点ともなる新宿中央公園においては、オフィス街のオアシス的なポジションを脱却した新たな役割が求められています。

 1968年の開園以来、樹木が生長して鬱蒼とした暗い印象を払拭するべく、植栽のメンテナンスや再編を行い、「遊び」「賑わい」「憩い」「学習」など、みどりの空間の特性を活かした多彩なプランの展開を試みています。

 また、オフィス街の不可避要因でもある夜間人口の大幅な減少で来場者数が低下する時間帯に、防犯面にも配慮しての来場者増加を促進するイルミネーションなどの案が考えられています。

 こうした公園の魅力向上を持続的に図っていくには、新宿区だけでなく、指定管理者や地域住民、地域企業等、様々な担い手がそれぞれの特性を発揮し、効果的に整備・管理・運営に関わることが重要となってきます。公園施設にネーミングライツ(命名権)を導入しサービス向上の財源を確保する一方、Park-PFI※3を活用し、飲食店やスポーツ施設が入る「SHUKNOVA (シュクノバ) 」を 2020年にオープンし、新たな賑わいを創出しています。

 従来のオフィス街の西側の区画になる、西新宿3丁目では総戸数約3,200戸に上る2棟の高層マンション計画があり、これに先立つ西新宿5丁目の「パークタワー西新宿」などの2棟の高層マンション約900戸と併せた世帯数の増加を考えると、西新宿は今後、居住エリアとしての性格も強めていくことが予想されます。それに合わせて生活利便等も大きく向上していくであろうことから、オフィス街としてもさらなるプラス要因が加わることが期待されています。

新宿中央公園「SHUKNOVA (シュクノバ) 」

新宿中央公園「SHUKNOVA (シュクノバ) 」


※2:出所 ギネスワールドレコードuinnessworldrecords.jp/world-records/busiest-station 2022年データ

※3:公募設置管理制度 公園の管理者(自治体など)が、民間事業者の中から収益施設(飲食店、売店など)の設置・管理を任せる事業者を公募し、選定する仕組み

新宿における新たなマーケットの可能性

 新宿駅周辺では現在、「100年に一度」とも言われる大規模な再開発が進行中です。西口・南口・東口それぞれで超高層複合ビルの建設が進み、都市機能の再編が行われています。新宿区の就業・通学人口は約57.7万人と、居住人口の約1.65倍。しかもその90%以上が他区・他市町村・他県から通勤・通学している層※4です。再開発によって駅の利便性が向上し、歩行者ネットワークが整備されることで、さらに広域からのアクセスが容易になり、就業者層の流入が増加する見込みです。

 消費者層も変化しています。観光客やビジネスパーソンに加え、高所得層や外国人居住者・訪問者の増加が予想され、これに対応する形で2023年開業のBELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel、 HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotelなどの高級ホテルや、2025年6月開業のドン・キホーテ新宿東南口別館では、商品の約7割が訪日客向けに※5厳選され、多言語対応スタッフやPOPを採用、免税レジを拡充したり、店内は日本の祭りをモチーフにした空間演出で文化体験を提供するなど、インバウンド対応店舗の進出が進んでいます。

※4:出所 従業地・通学地集計-新宿区の概要- 総務省統計局公表2022年7月22日

※5:出所 株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス ニュースリリース 2023年5月23日

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