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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

CRE戦略 相次ぐ大手企業の本社売却とCRE戦略
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相次ぐ大手企業の本社売却とCRE戦略

 2025年6月、東京商工リサーチが2024年度の上場企業による国内不動産売却に関する調査結果※1を発表しました。東京証券取引所に上場している3,826社のうち、2024年度に国内不動産の売却を開示したのは85社(前年度の97社から12社減)あり、そのうちの70社が売却面積を公表しています。社数は減少しましたが、合計面積は1,570,494m2と、前年度の約1.6倍に増え、売却を開示した企業の9割が譲渡益を計上しています。

 最近では日産が横浜本社ビルの売却を検討していることがニュースでも取り上げられました。※2日産は2027年までにグループ全体で2万人を削減するととともに世界で7つの工場を削減する再建計画を示しています。売却による現金調達と経営改善を図りつつ、賃貸テナントとして売却後の本社をリースバックし継続入居することを検討しています。

 また、IHIの工場跡地売却※3のように、事業撤退を伴う再編と成長が見込める分野への資産効率の向上を目的として売却を行う企業もあります。その他、パンデミックの影響でリモートワークや働き方、オフィスの在り方が見直され、エイベックス、電通、JTBなど多くの企業が本社売却に舵をきりました。

 実際、大手企業が本社ビルを売却する背景には、単なる資産処分ではなく、企業の経営戦略や財務方針の見直しが深く関係しています。

 本社ビルは企業にとって高額な固定資産であり、売却することで多額の資金を確保できます。その資金は、財務体質の改善や成長分野への投資に充てられ、企業の競争力強化につながります。また、売却は資産を持つことによるリスクを軽減し、柔軟な経営判断を可能にします。日産や電通のように本社売却後も同じビルを賃借する「リースバック方式」を採用することで、業務継続性を保ちつつ資産の流動化を実現するケースも増えています。

 東京のオフィスマーケットでは、外資系ファンドの購入需要が高まっており高値売却を可能としている外部環境もあります。こうした動きは、都心部の不動産市場にも影響を与え、オフィスの需給バランスや価格形成に変化をもたらす可能性があります。

 このように、本社ビルの売却は、企業の財務改善と経営戦略の再構築を目的とした、計画的かつ戦略的な判断であると言えます。すなわち「企業不動産の有効活用」は、CRE(Corporate Real Estate)戦略として、「企業が保有する不動産を経営資源として捉え、戦略的に活用・管理・売却・再配置することで、企業価値の最大化を図る経営手法」と定義づけられ、その効果として「キャッシュフローの改善・強化」「リスク分散」「ブランディング強化」等が期待でき、中長期的に企業価値を向上させ経営を安定させる重要なファクターとされています。

年度別上場企業売却企業数と譲渡差益合計額 推移



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