再開発や、都市の基盤整備計画の策定等により、新たな価値創出がもたらされることもあります。これらによる都市インフラの変革よって、利便性が向上するだけでなく、容積率緩和などの優遇措置が受けられる場合もあるため、保有する不動産を取り巻く都市計画の策定や変更などを視野に入れて置くことは、CRE戦略上でも見過ごせないポイントになります。
近年の再開発プロジェクト等においては、単なる建物の建て替えやインフラのリニューアルにとどまらず、公開空地や公共施設の整備、街区全体の景観形成などを伴う大型複合開発のケースも増えています。
建築基準法では都市計画と連携した容積率緩和制度が種々設けられ、代表的な制度としては「高度利用地区」「総合設計制度」「特定街区」「都市再生特別地区」などがあります。
「高度利用地区」(建築基準法第59条)は土地の高度利用を促進し都市機能を発展させることを目的としたもので、敷地の統合や空地の確保により、容積率の緩和を受けられる場合があります。
「総合設計制度」(同第59条の2)では、一定割合以上の空地を有する500平方メートル以上の敷地では、歩行者が自由に歩行・利用できる公開空地を設けること等により、環境改善に資すると認められる場合、特定行政庁の許可により容積率や高さ制限が緩和されます。
「特定街区」(同第60条)では、有効空地の確保や、文化施設・コミュニティ施設の配置、住宅の確保など、市街地環境の向上や地域の整備改善に寄与する程度に応じて、容積率が割り増しされます。
また、「都市再生特別地区」(同第60条の2)においては、都市の再生を目的としたものであれば、従来の用途地域や容積率規制の枠を超えた自由度の高い計画が認められています。この制度は、主に東京都心部を中心とした大規模な再開発等で活用され、対象地区内に不動産を保有しているケースでは、従来を上回る規模や用途での再活用も見据えることが可能になります。
それらの他に「再開発等促進区」(同第68条)、「誘導容積型地区計画」(同第68条の4)などでは、道路・公園・下水道といったインフラの整備を前提として、容積率の段階的な引き上げが可能となるケースもあります。
これらの制度は、既存建物の建替えや集約を通じて、同じ面積でもより高い収益を得られるアセット活用施策に取り組むことを可能にします。
アパホテル&リゾート〈大阪梅田駅タワー〉は、関西の梅田エリアで西日本最大級となる客室数1,704 室の大型ホテルの開発事業で、令和5年2月1日に開業しました。大阪最大級のターミナル駅である大阪駅や梅田駅など複数駅・複数路線が徒歩圏内で利用可能な駅前立地であり、多くの飲食店が立ち並ぶ「曽根崎お初天神通り商店街」や梅田エリアの百貨店街に近傍しています。ホテル会員からも望まれていた大阪・梅田駅近での出店であるため、より多くの人に利用いただくために、大阪市総合設計制度が活用されました。公開空地・壁面緑化の他、耐震性貯水槽を設置することで容積率割増しを受ける等、土地の持つポテンシャルを最大限に活かして建築されています。
プライムメゾン新橋タワーは、4面を道路に囲まれた敷地の中で、建物周囲に空地を確保することで周囲の市街地環境を向上させることや、容積率の緩和による事業性の向上を目指し、総合設計制度を採用して建築されました。
計画当時、周辺は都心の中規模オフィスや集合住宅が立ち並ぶ地域で、多くの人々がまちを活気づけているが、比較的小規模な敷地が多く幅員の狭い道路も多いため、指定された容積率を使い切れていなかったり、オープンスペースが不足していたりなど、土地の有効活用が図られていない状況がみられました。
そこで、歩行空間の確保のため、道路に囲まれた東西南北の4面には歩道状公開空地を、メインの歩行者動線がある敷地西側には広場状公開空地を配置し、ボリュームのある緑化を行いました。敷地は周辺に開かれたみどり豊かなオープンスペースを創出し、災害時には一時的に避難できるスペースとして、防災機能も担っています。