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今回は「社会的インパクト不動産とESG投資」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

TOPICS 社会的インパクト不動産とESG 投資
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社会的インパクト不動産とESG 投資

 近年、少子高齢化や激甚化が懸念される自然災害などの、社会課題への対応を求める声が高まりつつある中、社会資産であるべき「不動産」にも良質な不動産ストックの形成と中長期の適切なマネジメントを通じてこれらの解決に努めることが要求されています。それらの課題の解決のプロセスを介して価値創造に貢献し、企業の持続的成長と不動産の価値向上を導き出す役割を果たすのが「社会的インパクト不動産」です。

 わが国でも持続可能な社会の構築を目的としたESG投資が年々拡大し、2024年には投資残高が約625兆円※1となっています。ESG 投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を考慮して投資を行うことです。

 同様にインパクト投資に関しても、2024年にはその残高は17兆3,016億円※2に到達するほどの拡大を続けています。

 ESG投資においては、投資先企業のESGへの取組みの評価を検証しつつも、投資収益の最大化が優先されますが、インパクト投資では社会の在り方に対する変化・改善を促す啓発やインパクトの効果の発現が第一目標とされます。

 事例を求めれば、東京都の中央区・千代田区に跨る日本橋馬喰町近辺で発展してきた街の活性化施策がこの社会的インパクト不動産として挙げられるでしょう。

 この一帯は、古くから繊維業中心の問屋街として成立していましたが、産業構造の変化に伴い、問屋業をはじめとした地場産業の衰退と空室増加問題が顕在化していました。

 当初は、転用を計ろうにも、問屋業を営む過程でオーナーになった知見があまり豊富ではない事業主が多く、貸し先を法人に限定していたため、状況がなかなか改善しませんでした。

 そこで、SOHOまちづくり検討委員会とSOHOまちづくり推進検討委員会が立ちあがり、職住調和型まちづくり構想を策定します。そこにアートやデザインをベースにしたリノベを得意とするTOKYO・DESIGNERS・BLOCKのメンバーが参画し、ビルのリノベ等が進められました。

 また、このエリアで毎年実施されていたアート・デザイン・建築の複合イベント、CET(Central East Tokyo)も側面援護をする形になり、不動産や建築、グラフィック、メディア等に関する様々な知識資源を有する人材やクリエイターと地元コミュニティや企業とのマッチングが活発になり、その結果フルリノベされたビルなどが、CETのステージとしても活用されました。

 CETは2010年で終了しましたが、その後もクリエイターやアーティストが地元のお祭りや催事などと連携したりするパートナーシップは継続しています。

 2016年には問屋街活性化委員会によって、「日本橋問屋街 街づくりビジョン」が策定され、この街づくりの方向性は、問屋街の中にギャラリーやアートスペース、アートコンセプトを取り入れたホテルなどを擁するスタイルとして継続しています。

 いわゆる大規模な面開発とは異なり、一つ一つのアクションは小規模ながらも、様々な活動主体が地元のグループと外部のクリエイター等との橋渡しとなって、街の内外での対話の機会を設けコミュニケーションを活発化し、長期間に亘って街づくりを推進しています。

 今後、増加が予想される社会的インパクト不動産について、このような不動産を評価する制度として環境や健康等の分野は整備されてはいるものの、社会課題の幅広さに対峙するには十分とは言えません。

 そこで、事業者が取り組みやすく、投資家・金融機関等にとっても投資判断がしやすい環境を整備するために、実践ガイダンスが公表※3されました。このガイダンスの活用によって、「社会的インパクト不動産」に関わる「共通言語」として、企業等と投資家・金融機関等、利活用者・地域・行政等の対話の活性化や、社会課題に対応した不動産に関するファンドの組成・拡大、評価・認証制度が充実・普及されていくことが期待されます。

出所:※1:日本サステナブル投資白書2024

※2:GSG Impact Japan National Partner 「日本におけるインパクト投資の現状と課題」

※3:「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス 2022年3月24日 国土交通省公表 また同日、株式会社日本政策投資銀行よりDBJ Green Building認証の改訂方針が公表されました。

インパクト投資 残高推移
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