徳川家康が、1603年に江戸に幕府をひらいた際、駿府にあった銀貨鋳造所を現在の銀座2丁目に移し、正式な町名は新両替町でしたが、通称として「銀座」と呼ばれるようになりました。以降、銀座が日本を代表する街である理由は、将軍のお膝元で首都の表玄関として行政や商業の中心地であり続けたというところにあると思われます。
また、交通利便性も非常に高い立地で、東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線・有楽町線の他、都営地下鉄浅草線やJR有楽町駅も自在に利用でき、日本の交通の基点、日本橋から銀座4丁目交差点までは約1.6km、東京駅八重洲口からも約1.4kmという至近なアクセスとなっています。
2024年の年間訪日外客数、いわゆるインバウンド客は過去最高の36,869,900人※1に達しました。その経済効果は日本各地に現れていますが、銀座においても小売りや飲食、ホテル等の各局面で大きな数値上昇の要因となっています。
例えば、三越銀座店では2024年度売上 約1,241億円・前年比118.5%、また松屋銀座では、同約1,225億円・同120.3%と、既にインバウンド効果が顕著であった2023年度と比較してもさらに20%前後売上を伸ばしています。
銀座のハイストリートの店舗賃料や空室率の推移を追うと、特に2024年以降活況が加速しているのが見て取れ、賃料は2022年第3四半期に比して2025年第1四半期では坪当たり4万円の上昇、空室率は2024年第1四半期で1%台になり2025年第1四半期では0%に、またプライム賃料では坪当たり45万円という数値も散見されるものの、物件自体の空きがないという状態※2になっています。
こうしたことから、逼迫するテナントニーズはハイストリート以外のエリアにも波及し、既存ビルに対してはリニューアルや建て替えでの、また新規ビルの進出などによる大幅な増床が待望されています。
銀座は丸の内などに較べると、オフィスゾーンというよりも商業ゾーンであるイメージが強く、オフィス賃料(大規模)も大手町・丸の内エリアが4万円台前半であるのに対し、同じ中央区の日本橋・京橋・八重洲エリアに次ぐ3万円台前半※3となっています。
本店・本社を構える企業としては、「資生堂」(1872年)や「和光」(1881年)など社歴の長い企業が多い、新聞社や放送局の支社・支局が多い土地柄から「時事通信社」や「マガジンハウス」などマスコミ系の企業が多い、各種シアターなどが昔から多く点在し「東映」や「歌舞伎座」などエンタメ系の企業が多い、ということが特色として挙げられます。
都心5区の業種別オフィス分析で比較すると、グラフからも読み取れるように、サービス系が都心5区の9%に対し銀座は17%、マスコミ系が都心5区の7%に対し銀座は18%と多く、逆にIT・情報系では都心5区の22%に対し銀座は8%と低い数値になっています。
オフィスの空室率は中央区全体での数値ですが、銀座で主流となる大型ビルが3~5%台、中型ビルが4~8%台で推移し、同時期での銀座のオフィス賃料は、大規模ビルが27,000~32,000円台、大型ビルが23,000~26,000円台、中型ビルが21,000~24,000円台、小型ビルが20,000~22,000円台で推移しています。
現在、同じ中央区内の日本橋エリアでは大規模な再開発が複数進行中で、今後オフィスゾーンとしてのグレードが増々上昇し、MICEなども充実していきます。また、内幸町でも大規模再開発計画「TOKYO CROSS PARK構想」が始まりました。さらに近い将来、豊洲に移転した築地市場の跡地でも大規模な再開発の計画が進められ、近隣の動向が賑やかになってきました。
丁度、銀座を取り巻くように位置するこれらの3つのエリアの再開発が進行していった際に、核心的な位置を占める銀座には、例えばMICEのインバウンドメンバーの飲食の場や宿泊・滞在の場などとしての新たな需要も高まっていくことが考えられます。
商店主達による「銀座街づくり会議」の意向や「銀座ルール」とよばれる地区計画もあり、100mを超える高層オフィスビルが歌舞伎座タワーだけに留まるという現在の状況にも変化が現れ、今後は銀座にも高層オフィスビルが登場するかもしれません。
いつの時代も日本を代表する街という役割を果たしてきた銀座は、日本国内外のニーズを的確に把握し、さらにその存在価値を高めていくであろうことが期待されています。