2024年9月に経済産業省が発表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2023年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模(国内)は前年比+9.23%の24.8兆円と堅調に上昇しています。BtoC-ECの分野は、物販系、サービス系、デジタル系に分類されており、物販系は食料品や生活家電、雑貨、家具、衣料品などのオンライン上取引、サービス系は旅行や金融などの“窓口で受けていたサービス”や、飲食や理美容の“予約サービス”のオンライン上取引、デジタル系は電子書籍や有料音楽配信などのオンライン上取引を指します。
2023年の分野別市場規模は、物販系で14兆6,760億円(前年比+4.83%)、サービス系は7兆5,169億円(同+22.27%)、デジタル系は2兆6,506億円(同+2.05%)でした。これまで同様、物販系のECは堅調ですが、ここに来てサービス系の市場規模の急拡大が目を引きます。
サービス系分野が伸びている理由としては、コロナ禍による行動制限により「店を予約する」という習慣が根付いたことが大きいといえます。店を訪れるにはまず予約、銀行窓口に行くにも予約が必要という時代になると同時に、電子商取引システムが発達し、携帯端末などから様々な取引が可能となったことも急拡大に繋がったといえます。
小売業では、実店舗とECの相乗効果による販売の模索の途上、コロナ禍によってECが先駆けする状態になっていましたが、コロナ後の人流回復に合わせて、実物とのタッチポイントの役割としても実店舗のニーズが高まっています。
物販系のEC規模は2014年以降右上がり状態を続けてはいるものの、そのEC化率は2024年時点でも9.38%に過ぎず、今後のポテンシャルを鑑みると、ECマーケットにアクティブに対応する物流倉庫や運送体系、またそれを円滑化するインフラやシステムなどに関する需要はますます拡大すると思われます。
一方で、市場の伸びも大きいサービス系の分野では、物販系ほど大きな倉庫や多数展開する店舗といったスペースの必要性は高くはないですが、情報の受発信のオペレーション拠点として、先進性の高いオフィスのニーズ増大が見込めます。
このように今後さらに市場拡大が継続するBtoC-ECは、不動産マーケットにおいてもいろいろなカテゴリーを活性化していくことが期待できます。