三井不動産リアルティ REALTY news Vol.119 2025 3月号

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TOPICS 1

スモールコンセッションが推進するPPP実現可能性

 近年増加中の、日本を訪れるインバウンド観光客の中での、リピーターの割合が高まっており、インバウンド観光客の約6割がリピーターで、そのうち約56%は1年以内に再訪しているとされています。※

 初回訪問客は東京、大阪、京都などの大都市圏を訪れ、リピーターは地方へと足を運ぶ傾向が目立ち、彼らはよりディープな日本体験を求める志向があります。しかし、地方では、宿泊施設や交通手段といったインフラの受け皿が十分に整備されていないケースが多く、短期滞在を余儀なくされたり、訪問自体を断念したりする観光客も少なくありません。

 このような状況を踏まえて、国土交通省は「スモールコンセッション」という仕組み活用することによる官民連携(Public Private Partnership)で、地方の観光インフラ整備を促進する施策を推進しています。2024年12月には、スモールコンセッションの活用をさらに活性化するための新たな「プラットフォーム」が構築されたことに加え、各自治体にプロジェクトの初期段階における様々な課題の解決をサポートする専門家を派遣するなど、地方での観光需要拡大に向けた取り組みを強化していく方針です。

 スモールコンセッションとは、小規模な公共施設の運営や管理を民間事業者に委託する手法です。地域ごとの特性に応じた小規模な事業を推進するのが特徴で、観光分野においても応用されています。この仕組みの活用により、地方の観光客の受け入れ体制が強化され、持続可能な観光産業の発展を支えていくことができます。

 具体的な施策としては、宿泊施設数などが限られ観光客の増加に対応しきれないケースに対して、既存の旅館やホテルの改修支援新たな宿泊施設の開設、歴史的建造物を活用した宿泊施設の整備などを推進したり、公共交通機関の利便性が低く、観光客が移動に困るケースに対しては、レンタカー事業や観光タクシー、オンデマンド交通の導入支援により、観光客の移動手段を確保しやすくすることなどが挙げられます。

 また、地域の観光情報を一元的に提供するデジタルプラットフォームの活用により、訪日客が地方の魅力を簡単に発見できるようにし、多言語対応の強化も推進すれば、さらに広範に情報の周知を計ることも可能になります。

 スモールコンセッションの導入は、小規模なプロジェクト単位での施策になるため、調整事項も低減され、短期間で実施に漕ぎ着けうることに加え、地方自治体と民間事業者の協力体制が整いやすく、より観光客のニーズに合った柔軟な対応が可能になります。観光客が増えれば、宿泊業や飲食業などの地域経済が活性化し、雇用創出にもつながります。

 今後多くの地域でこのスモールコンセッションの取り組みを活用して、観光インフラの整備が進められることが期待されます。併せてDXの柔軟な導入が促進されれば、各自治体や事業者の間でノウハウが共有され、さらに効果的な施策が生まれていくでしょう。

 スケールはスモールでも、成功事例が積み重なることにより、日本全体の観光産業の持続的成長の基盤がより強固になっていきます。

※参照:日本政府観光局:訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
国土交通省 観光庁:インバウンド消費動向調査【トピックス分析】 訪日外国人旅行者(観光・レジャー目的)の訪日回数と消費動向の関係について

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TOPICS 2

ミリオネアの評価を獲得する街の魅力

 英国の投資コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズが2024年5月に公表した「全世界の都市別ミリオネア数ランキング(2023年12月時点)」によれば、東京のミリオネア数はニューヨーク、サンフランシスコ周辺に次いで第3位(29.8万人)で、ロンドンの22.7万人、パリ周辺の16.5万人を上回り、シドニー(14.7万人)の倍近い数となっています。

 トップ50都市の内訳を見ると、アメリカが11都市、中国(香港は除く)が5都市、オーストラリアが4都市、日本、イギリス、イタリア、インド、カナダ、スイス、フランスが各2都市となっています。日本では東京と大阪(約4.3万人)がランクインしました。

 とはいえ10年前(2013年)の同調査を見ると、世界第1位は東京でした。東京、大阪共にミリオネア数は減少傾向にあり、過去10年間で東京で5%、大阪で12%も減少しています。他に、10年前に比べてミリオネア数が減少した都市は、モスクワ、ロンドン、香港の3都市のみとなっています。

 現在、各国のミリオネア層においては、様々な要因により居住地を他国に移すというトレンドが見られます。

 例えば、欧州各国では超富裕層に対する所得税等増税などの課税強化策への対抗策として、また中国では、デフレ経済深刻化や政府による金融取引等の監視強化への回避策として、さらには、トランプ政権誕生に伴う将来懸念等の理由からです。

 潤沢な資産を有するミリオネアたちにとって、他所への移住はあまり躊躇を伴わない行動であることとは推測されますが、一方でミリオネアに流出された側にとっては、住む魅力のない街というレッテルを貼られたも同然で、街力の低下をより顕在化してしまいかねない事象であるとも考えられます。

 日本国自体が政治的に安定し、戦争もなく治安も良くインフラ(食事やサービス・交通事情等)も充実して、加えて海外から見れば、円安効果や長引いたデフレの影響もあり、不動産を含む様々な商品価格が他国の都市に比べ割安で、不動産所有に対する規制も緩い…等、魅力満載に見えます。

 であるのに、東京のミリオネア層が減少していたのは、以前より東京に滞在する際に、ラグジュアリーホテルが少なかったことが理由の一つとして考えられます。ここ数年では外資系のラグジュアリーホテルの進出が相次ぎ、2023年にはブルガリホテル(八重洲ミッドタウン)、ジャヌ東京(麻布台ヒルズ)が開業し、2026年にウォルドーフ・アストリア(日本橋一丁目中地区再開発C街区)、2028年にはドーチェスター・コレクション(トーチタワー)の開業が予定されています。これらの高層ビルの上層階に相次いで進出するラグジュアリーホテルが、ミリオネアたちの東京移住促進への側面援護の役割を果たすことも期待されます。

 今後、注目度が上がっていくであろう東京ですが、楽観材料ばかりではなく、人手不足、物価上昇、インフラ老朽化等、街力の伸長の頭打ち要因になりかねない事柄が山積している現状もあります。インバウンド資産の呼び込みと、こうした課題解決施策を柔軟に並行して、さらに魅力の向上を計る工夫が不可欠となっています。

都市別100万米ドル以上の資産保有者(ミリオネア)数ランキング トップ15
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TOPICS 3

インバウンド需要の伸びがマーケット全体を活性化

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