三井不動産リアルティ REALTY news Vol.117 2025 1月号

今月のトピックス TOPICS
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賃貸オフィス 成功事例
REALTY PRESS
TOPICS 1

DX導入が課題解決のカギとなる物流マーケット

 2024年後半の物流マーケットの推移は、消費の改善傾向やECの進展もあって、全国的には需要が堅調に推移し、好調な水準を維持していたと言えるでしょう。

 その一方で、マーケットの大きな構成要素でもある運送従事者の事情については、2024年問題として就業上の課題が大きくクローズアップされ、強い関心が向けられてはいましたが、2024年単年で解決が計れる簡単なレベルではなく、今後も一層の強い取り組みをしていく必要が改めて認識されています。

 2024年1月の運送業における有効求人倍率は3.39となっています。産業全体の水準1.27を大きく上回り、一見、強い売り手市場のようには見えるものの、裏を返せば求人への応募が芳しくない状況、いわゆるドライバー不足を示唆しています。

 ドライバーの平均年齢は、大型車で47.5歳、中小型車で45.4歳と、全業種の平均年齢42.2歳を上回って※1おり、ここからは若年層不足が見て取れます。

 若年ドライバーの参入阻害要因としては、作業効率の悪さが挙げられており、その大きな項目として荷待ち時間の長さがあります。国土交通省の発表によるとトラックの1運行当たりで荷待ち時間が発生した場合は、平均1時間34分※2に達し、このことが作業効率の低下に直結しています。すなわち、荷待ちという非生産的な拘束時間が、1日あたりの配送数の低下や、運転手のストレスや疲労の増加を惹起し、労働環境の満足度や健康状態を悪化させているということです。

 そうした現状において、この荷待ち時間の解消の一番の障壁となっているのは、荷主側の認識の低さであると思われます。荷待ち時間の発生の認識について、現場のドライバーでは73.4%であるのに対し荷主側では約20%台で、待機時間の料金を荷主側が負担していない割合は約60%※3に上っています。

 また、トラック運送事業者が過労運転、過積載運行、速度超過、非合理な到着時間などを強いられることによる、法令違反行為を行った際に、荷主が主体的に関与していたと認められた場合に、国土交通省が荷主に対して是正措置を勧告する「荷主勧告制度」というものがありますが、これの内容を理解している荷主側の割合は約22%※4にとどまっています。これらのことから、まず荷主側の意識改善を行わない限り、根本的な解決は困難なことが予想されます。

 荷待ち時間の発生理由で最も多いのは「出荷体制が整っていないため」という回答で、次いで「受付や着荷指定時間が集中するため」というものでした。これらは、倉庫周辺の道路インフラの整備が不十分なことや、DX導入や活用が不十分でオペレーションが硬直化していたりすることなどが主な原因と考えられます。

 近年は、ITシステムの採用に積極的で、積み込みや積み下ろしの動線を柔軟に誘導し迅速化を実現し、トラック予約受付システムなどに対応して入出庫をスムーズに管理する物流倉庫も増えてきています。荷主側はこうした施設に目を向けて活用することが、将来的に自身の物流を悪循環に陥らせてしまうリスクの軽減にも寄与することになります。

※1:2016年 国土交通省調査より
※2~4:国土交通省発表、「トラック輸送状況の実態調査結果」より

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TOPICS 2

賃料上昇が続く賃貸マンションマーケット

 東日本不動産流通機構の発表による東京23区の賃貸マンションの年間成約件数は2020年で約6.8万戸、2021年は約7.3万戸、2023年は約8万戸、2022年は約7.7万戸、2024年(1~9月累計)は約6.4万戸。2024年年間では8.2万戸程度と予測されることから、概ね各年3,000~5,000戸前後の増加であり、市場規模は拡大を続けています。

 賃料水準の上昇も継続中で、2020年4月(緊急事態宣言発出)から、2023年5月(新型コロナウィルス感染症が第5類に移行)までがいわゆるコロナ禍の時期ですが、賃貸マーケットは殆どコロナの影響を受けておらず、安定した賃料上昇を続けてきました。2022年7-9期→2024年7-9期の単価上昇率は11.0%となっています。

 同期間の都心5区の単価上昇率は、千代田区+12.4%(4,412→4,957円/㎡)、中央区+14.6%(3,955→4,531円/㎡、港区+7.5%(4,653→5,001円/㎡)、新宿区+16.3%(3,631→4,223円/㎡)、渋谷区+16.3%(4,082→4,748円/㎡)と、㎡あたり4,500~5,000円が相場となってきています。

 東京23区の賃貸マンション相場は、長らく単価3,100円/㎡台で推移していましたが、職住近接の利便性を求める層が増えたことから、上昇基調に転じています。要因としては1.新築賃貸マンションでは土地価格、建築費の上昇による賃料の引き上げが常態化したこと、2.既築の賃貸マンションでも賃料引き上げが続いたこと、などの状況に、3.都心部での、分譲マンション価格の高騰により、購入者が減り、住み替えに伴う退去が減ったこと、などによる品薄感も加わったことが考えられます。

 需要層には依然、根強い都心志向があることに加え、今後も土地価格や建築費は高止まりする見込みであるため、当面上昇は継続すると考えられます。

 一方、『都心部の大面積住戸』については、人気、需要とも高い状況が続いています。かつては外国人が主な対象とされていた商品ですが、コロナ禍に邦人の受け入れを強化した結果、邦人による契約が増え、アフターコロナ期に入っても安定稼働が続いています。立地力を評価するハイクラス層による賃貸需要は旺盛といえるでしょう。

 今後は都心部の高額分譲マンションが賃貸化するケースが増え、需給バランスは改善に向かうとは考えられますが、それ以上に需要は伸びると見込んでいます。賃貸マンションマーケットにおいても、ハイクラス向けと一般向けの二極化は進むものの、共に投資先としては高い魅力が感じられます。

東京23区の賃貸マンション 成約件数と平均㎡単価の推移(レインズ)
賃貸オフィス
TOPICS 3

人材確保を優位にし、生産性を向上させるオフィス

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