三井不動産リアルティ REALTY news Vol.116 2024 12月号

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REALTY PRESS
今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

生成AIの利用増大で、データセンターの拡充が急務

 近年、各種イノベーションや医療・ヘルスケア、気象予測等の分野でAIの活用が進んでおり、データ蓄積のためのサーバーやネットワーク機器を設置することを目的としたデータセンターの整備の必要性が高まっています。

 今後は、さらに生成AIの利用局面が大幅に向上することが予想されることから、データセンターに求められる処理能力量は急激に増加します。

 デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを意味するDX(デジタル・トランスフォーメーション)を促進させていかないと、日本では2025年以降、毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算されており、この問題は「2025年の崖」と称されています。この急浮上しそうな、「2025年の崖」の懸念を少しでも緩和するためにも、国内におけるデータセンターの拡充・整備は喫緊の課題です。

 現状、国内のデータセンターは東京圏および大阪圏に集中しています。データセンターがこれらのエリアに集中している理由は、利用量の多い大都市に対してデータ供給時の遅延性を防止するためで、一般的に、データセンターは大都市から35km圏内に設置されることが求められています。

 例えば、東京圏であれば千葉県の印西市がデータセンターの集中しているエリアとなっていますが、そこに集中しているのには、主に3つの理由があります。

 1つ目は、太平洋を横断する海底ケーブルの結節点にあるという点です。

 日本は北米とアジア太平洋岸を海底ケーブルで直接つなぐポイントにあり、その地理的優位性から、データセンターのハブ拠点として世界からも注目されています。東京圏では太平洋を横断してくる海底ケーブルの陸揚げ局は、千葉県の南房総と茨城県の北茨城の2ヶ所にあり、印西市は、その2ヶ所から東京への橋渡しができるポジションになっています。

 2つ目は、自然災害リスクが低いという点です。

 千葉県の中でも内陸部にある印西市は、津波のリスクが低く、また、東京圏の西部には立川断層がありますが、東京圏の東部に位置する印西市は立川断層からも離れており、断層を原因とする地震のリスクが低いとされています。

 3つ目は、十分な電力供給を受けられるという点です。

 データセンターは大量の電力を消費しますが、千葉県の東京湾沿いには東京電力の火力発電所が存在し、印西市はデータセンターの運用に必要な電力を受電しやすい立地となっています。

 しかし、国内でデータセンターが東京圏および大阪圏に集中している現状は、大規模災害時のリスクやBCP対策の観点からはあまり好ましくありません。そのため、データセンターを全国に分散して配置していくことが今後の課題となっています。

 都市部から離れた場所にデータセンターを配置する場合、データ転送時の遅延性が問題視されますが、転送インフラを強化することや、転送スピードへの要求が比較的低いAI用データ向けの設備を計画的に配置したりすることで、大都市圏から離れた立地を活用できる可能性があります。

 データセンターを構築するには、災害リスクの低い立地や豊富な電力供給、またある程度の交通利便性など、さまざまな条件が整っている必要があることから、建築可能な場所は限られてきます。今後はそうした適地におけるデータセンター用地の争奪戦が予想され、ポテンシャルの高いエリアの地価は上昇していくものと予想されます。

※総務省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf)

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TOPICS 2

高い商品性がカギを握る新築オフィスビル

 東京ビジネス地区のオフィスビルに関しては、以前から「新築ビルの空室率の高さ」に留意してきましたが、三鬼商事発表データによれば、2022年6月以降、2024年6月を除き空室率20%以上の月が続き、一時的に40%超となる月も見られるなど、厳しい状況が続いています。

 新築ビルの空室率がなぜ高いかについては、いくつかの要因が考えられますが、その一つが近年の新築大規模ビル供給の多さです。

 三幸エステートのデータによると、2020年以降の都心5区におけるオフィスの新規供給面積(中型ビル以上)は、2025年までの6年間で約100万坪※が開発され、募集されています。2015年以降の代表的な物件としては、渋谷スクランブルスクエア(約8.4万坪、47階)、東京ミッドタウン八重洲(約8.8万坪、45階)、東京ガーデンテラス紀尾井町(約6.9万坪、36階)の他、森ビルによる虎ノ門や麻布台等の再開発物件が挙げられます。

 6年間で、延床面積5万坪超のビルが20棟に相当するほどの量の供給は、需要の多い東京都心部であっても過多といえ、それに対して空室消化のスピードが追い付いていないことが高い空室率の原因と考えられます。

 第二の要因としては新築ビルの賃料水準の高さも挙げられます。

 2024年10月の東京ビジネス地区の平均賃料は、新築ビルで坪@27,158円、既存ビルは坪@19,986円と、新築ビルは既存ビルに比べ36%高い設定になっています。過去には40%台後半の乖離が見られたこともありました。さらには下グラフにもあるように、既存ビル賃料が概ね緩い下落傾向にあるのに対し、新築は2022年6月を底に上昇基調が続いています。

 建築費の高騰や商品企画の向上などにより、ある程度の単価引き上げは仕方ないところですが、大規模物件ではフロア面積自体が大きいため、グロス賃料は跳ね上がります。コロナ禍を経てオフィスレイアウトの見直しや就業体制の変化が進む中、経費的にも巨額に達する大型フロアを志向する企業は減っており、それらが要因となって、新築の大規模ビルでの成約までの時間は以前よりも長くかかるようになっています。

 2018年~2021年前半の期間は、新築ビルでも空室率10%以下の好調が続いていました。その当時も、新築ビルの供給は多かったものの、コロナ禍前の好調期だったため、賃料が高かったにもかかわらず、旺盛な需要が見られたことが順調な空室消化の理由となっていました。

 コロナ禍後の出社率が回復している中にあっても、新築ビルの空室消化が以前よりも鈍い主要因は、供給量の多さにあると考えられます。今後も東京都心の新築ビルについては、この供給状況が継続する見込みとなっており、商品性のより高いオフィスビルの登場が需要を強く引き込んでいくと見ています。

※年別では2020年:230,900坪、2021年:89,400坪、2022年:101,300坪、2023年:230,600坪、2024年:119,000坪、2025年:236,700坪(見込)

新築ビル・既存ビル 平均賃料 推移
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TOPICS 3

2025年問題に直面する医療・介護体制とリート活用による打開策

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