三井不動産リアルティ REALTY news Vol.114 2024 10月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

建築コストの高騰で注目されるリノベーション・コンバージョン アセット

 ここ数年、建設業界は大きな転換期を迎えています。2025大阪・関西万博、リニア中央新幹線関連工事といった数多くの国家的プロジェクトが進行し、建設バブルともいえる状況が続いています。2024年度の建設投資額は、半導体工場の建設を含む国家施策もあり、73兆円を超える見通しです。しかし、その一方で、上昇し続ける建築コストが業界全体に重くのしかかっています。

 上昇の要因としては、一時期深刻視されたウッドショックに続き、円安が進行した状況下で木材や鉄鋼材等の原価上昇に加えて、エネルギーコストの上昇も複合的に関係し、さらには慢性化しつつある人手不足の中で労働力を確保しなければならない人件費的な問題も介在します。

 そうした局面で、2024年4月には、建設業においても「働き方改革関連法」が適用され、残業規制や週休二日制が導入されました。これにより、工期の長期化が避けられず、これらの要因を受けて、工事費が2015年比で約1.3倍に上昇し※1、その影響で、東京五反田のTOCビルや札幌駅南口の再開発プロジェクトなど、工事の延期やプロジェクト自体が見直しとなるケースも出現しています。

 このような建築コストの上昇と工期の長期化を回避する方策として注目されているのが、「リノベーション」や「コンバージョン」です。既存の建築物に改築等を施し再活用するのがリノベーションで、他の事業者や用途に転用するのがコンバージョンです。大々的に建築費を抑制できる上に、工事期間をも短縮し、早期に新たな事業を開始できるという両面的なメリットがあります。最近では、外資系企業が日本国内の物件を積極的に取得しているというニュース※2も話題になりました。

 コンバージョンをスムーズに成功させるためには、従来の建築物の適正評価が必要不可欠で、物件の構造や耐震基準などを満たしているか、施設の用途変更が法的に許可されるかなど、慎重な調査と計画が要求されます。しかし、このプロセスをクリアすれば、建築費高騰の影響を低減しつつ、早期の事業展開に移行できることから、今後ますますリノベーションと併せてコンバージョンの需要は拡大すると予想されます。

※1 国土交通省公表 建設工事費デフレーター 2015年を基準にし、2024年4~6月は127.7%
※2 一例として、グローバル投資会社KKRが、日本国内のユニゾホールディングス系列ホテル14軒を買収し、2024年後半に3600室超の客室がマリオットブランドの宿泊特化型ホテルとしてオープン

有限会社アローフィールド 代表取締役社長 矢野 翔一

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TOPICS 2

インバウンドを含めた旅行客増加と、オーバーツーリズムの解決策

 コロナ禍の終焉後、国内、インバウンドとも旅行者が増加しています。

 日本政府観光局は2024年3月以降、毎月300万人以上の訪日外客数があることを公表しており、7月に開催された観光立国推進閣僚会議では、2024年の訪日外国人旅行者数が約3,500万人、旅行消費額は約8兆円と過去最高になる見通しが示されています。さらに、2030年の目標はインバウンド旅行者数6,000万人、消費額15兆円と、2024年の「ほぼ倍」を目指しています。

 また、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、2023年の年間延べ宿泊者数は約6億1,747万人泊で、2011年以降では最多となりました。2024年の上半期(1~6月)の総宿泊数は3億476万人泊、前年同期の2億8,340万人泊に対し、7.5%の増加となりました。外国人宿泊数は7,726万人泊(同4,894万人泊)と、昨年の1.58倍に増え、シェアも25%強まで引き上げられました。

 アフターコロナの急激なインバウンド客増加については、百貨店の売り上げアップや、体験型消費の拡大などの経済的なプラス効果が見込まれる反面、「オーバーツーリズム」の問題もクローズアップされています。

 旅館・ホテル業界では、宿泊者が南関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)と、近畿(特に京都、大阪)に集中していることで、このエリアでは需要過多の状態になり、「スタッフが足りない」、「予約が取れない」、「宿泊費が高額化する」等の問題が勃発する一方で、宿泊数が伸びる地域と伸びない地域との格差拡大という現象をも引き起こしています。

 現在、国内の旅館・ホテルには6.0~6.5億泊程度の客室キャパがあると考えられますが、2030年までに目標通り外国人観光客が増えた場合、キャパオーバーするのは明らかです。仮に日本人の旅行者数を横ばいと仮定しても、首都圏や近畿圏では今以上に宿泊施設の確保が厳しくなり、宿泊費の高騰は続くと考えられます。

 その対策として、旅館・ホテルのキャパシティを高めることが喫緊の課題で、加えて政府方針にもある「地方への誘客促進」が長期視点の課題となります。

 下グラフにもあるように南関東、近畿以外の、宿泊需要の少ない地域に対するテコ入れ~例えば、観光拠点の開発とセットとなったホテル開発~により取り込んだインバウンド需要を分散し、地域活性につなげることが重要です。機を見るに敏な外資系ホテルなども、既に地方都市やリゾート地への展開※を始めています。

 日本政府の言う「観光立国」化の実現には、旅行客増加と宿泊マーケット拡大、観光拠点の地方分散等を柔軟にイメージした取り組みが必要とされます。

※金沢に2020年にハイアット セントリック、ハイアット ハウスの2棟がオープン。ヒルトンは富山、長崎、広島に進出、鹿児島にはシェラトンがオープンした。また、北海道ニセコエリアでは、ヒルトンニセコビレッジの他、パークハイアットがホテル棟とは別にレジデンスを分譲。岩手県の安比高原ではIHGの1000室を超えるリゾートホテルが進出。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

エリア別 旅館・ホテル営業数構成と外国人宿泊者数構成の比較
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日本一の総取扱貨物量を誇る名古屋港、名古屋の魅力

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