三井不動産リアルティ REALTY news Vol.106 2024 2月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

物流マーケットの革新は、2024年問題を契機に活性化

 物流業界では、主にドライバー不足による2024年問題が話題となっています。

 この不足問題を早急には解消し得ない今後の物流業界は、従来のようにスピードとコストの追求を第一義に据えた競争ではなく、混載や様々な融通施策等を駆使して、この事態を補い合う協働の方向へと移行していかざるを得ないことが予想されます。

 そのために多彩な方策が展開され始めており、例えば三井不動産ではIHIとの協業で3次元ピッキングシステムを導入したEC特化型物流センターを、船橋市に構築しました。

 このEC特化型物流センターは、スムーズなITの導入で商品の仕分けや集荷を高速化することにより、出荷までの待機時間を削減し、ドライバーや倉庫で働く人員の負担を減らすことができる省人化倉庫です。今後さらに需要が増大すると予想されるEC物流への、有効施策として注目されています。

 また、新たなカテゴリーの荷主に向けたマーケットの開拓も進められています。三菱地所では今後日本国内において需要の拡大が見込まれるものの発火のリスクにも対処しなければならない電気自動車向け電池や、主要産業として巻き返しを図る半導体分野で製造時に駆使する多種のガスを、高圧下でコントロールしながら格納できる倉庫の開発を計画しています。

 このように近年の倉庫は、単なるスペースの確保に留まらず、建物側に様々に特化した設備や機能を備え、競合との差異を明確化するようになってきましたが、その背景には、2024年問題だけでなく、物流倉庫の不動産市場推移も影響しています。

 国内のインターネット通販は依然、活発な状態が続き、物流適地に対する土地の需要も旺盛な状態が続いている状況です。この物流適地とは、高速道路インターチェンジや幹線道路等へのアクセスが良好で、LMT(大型マルチテナント型物流施設)などの立地可能な画地規模の大きな土地です。

 強い需要は工業地の地価公示に反映されており、2023年の地価公示※1において東京圏では10年連続で上昇している状態です。新型コロナウイルスの影響で住宅地や商業地の地価が下落した2021年でも、工業地に関しては影響をほとんど受けず、上昇が続いていました。

 底堅い需要に対しては、大手ディベロッパーを中心に倉庫の開発競争が繰り広げられてきましたが、その結果懸念されてくるのが、需給バランスです。2023年の首都圏のLMTの空室率※2は8.2~8.9%で推移し、2022年(4.4~5.6%)と比較すると上昇傾向にあります。倉庫の開発競争が活発に行われてきた結果、供給面積と空室率が増え、供給過剰の兆候が見え始めてきた、ということになります。

 今後は、需要の安定確保のために、利用者に選ばれる倉庫であることが重要となってきます。

 今までは利用者の中心は荷主でしたが、2024年問題を機に、ドライバーを利用者として勘案する必要性が高まりつつあります。そして、この利用者に選ばれる倉庫とは、大消費地に近く、高速道路インターチェンジや幹線道路等へのアクセスが良好である立地が一つの条件になり、そして次に、ドライバーの負担を軽減する倉庫の機能や設備が条件になります。

 コストやキャパシティ以外のこうした点が、物流業者に対して多大な影響を及ぼすように変わっていくことが予想されます。

※1:国土交通省「令和5年地価公示」
(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_fr4_000001_00135.html)

※2:CBRE「賃貸倉庫・物流施設の市場動向|ロジスティクスマーケットビュー2023年」
(https://www.cbre-propertysearch.jp/article/industrial_marketview/)

株式会社 グロープロフィット
代表取締役 竹内 英二

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TOPICS 2

再開発計画に際しての、日本の住宅の「耐震」について考える

 令和6年元日に発生した能登半島地震の現場報道では、多くの家屋の倒壊を目にしました。報道によれば、木造家屋にダメージが出やすい周期の揺れであったことに加え、このエリアの耐震建物比率が低かったことが被害の大きな原因とも言われていますが、同時に過疎化や高齢化の進行、この地方特有の地形特性など、対策の困難さをも痛感させられています。

 全国の建物の耐震化率を測る目安としては、「昭和55年以前に建てられ耐震診断も耐震改修工事もしていない持ち家数」※1が公表されています。

 この“家数”を「耐震基準を満たさない建物戸数」とすると、調査時期の平成20年当時、その数は全国で約1,038万戸。総持ち家数の34.2%が耐震対策未対応のままということになります。

 その比率が高い(45%以上)のは島根県、鳥取県、秋田県、富山県の4県。その一方、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県は30%未満と低く、耐震化率自体は高いのですが、東京圏や近畿圏のような人口集中エリアには「未対応住宅が絶対数として多い(東京圏約2,137千戸、近畿圏約1,829千戸)」という問題があります。

耐震診断・耐震改修工事未着手戸数

 近年、太平洋側を震源とするいわゆる南海トラフ地震と称される大地震発生の切迫性が高まっているとされており※2、この地震が阪神・淡路大震災以上の直下型であるとすれば、人口集中エリアで築古木造家屋が多い「木密地域」において甚大な被害を発生させることが予見されます。

 このような大地震で想定される被害に対して街の機能へのダメージを軽減する、建物倒壊や火災に強い街づくりが重要視されており、その施策としては、「都市部の木密地域を減らす」ことが不可欠で、それを今後、市街地等の再開発が計画される際の、中核とするべきではあるでしょう。

 災害に強いインフラを優先することにより、軒と軒同士が密接しているような木蜜地域ならではのコミュニケーションが弱まる等のデメリットを懸念する声もありますが、地震は“いつか必ず来る”、“避けられない”ものとして有効な対策を事前に講じるべきで、建物の耐震化や不燃化などは、生命と生活を守り、早急な災害からの復旧にも寄与すると改めて認識させられています。

※1 総務省統計局HP:平成22年2月に全都道府県の公表が完了と発表

※2 国土交通省・気象庁南海トラフ地震について より引用
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/nteq.html

株式会社 工業市場研究所 川名 透

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TOPICS 3

2025大阪・関西万博に向け再開発が進む関西

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