三井不動産リアルティ REALTY news Vol.104 2023 12月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

区分所有法改正のマンション市場への影響

 首都圏を中心に増える老朽化マンションの建て替えがしやすいように、要件緩和に向けた政府の動き(区分所有法改正案)が本格化しています。

 マンションの建て替えについて、現在では所有者の5分の4の賛同が必要となりますが、改正案では、4分の3の賛同※1にまで引き下げられます。

 また、借主が存在し、居座り等で工事に着手できないケースなどについては、議決に基づいて6か月後の退去を要求でき、所有者が立ち退き費用などを補償することで賃貸借契約を解除できるようになります。2024年の通常国会で提出される見込みのこれらの改正案で、マンションは現状より建て替えがしやすくなると思われます。

 国土交通省の調べによると、築40年以上の分譲マンションは、2022年末でおよそ126万戸あり、2042年末には約3.5倍の445万戸にまで増加する見込みです。

 東京カンテイが実施した調査※2では、これまでに建て替えを実施したマンションは、全国で282件、そのうち東京は6割以上のシェアを占め、港区と渋谷区がトップの29件で並んでいます。

 建て替えにより、容積率や建蔽率の緩和等が見込めるケースもあり、こうした増床分の権利を、デベロッパーなどの事業者に売却することで、建築費用の負担が軽減され、住民合意を形成しやすい条件も整います。したがって今後、マンション供給が少ない人気エリアで、現在の戸数から建て替えによって総戸数の増加幅が大きくなるマンションに、注目が集中することが予想されます。

 高度成長期に建てられたマンションは、駅近などロケーションに恵まれているものが多く、立地条件のいい物件は銀行融資も得やすいと思われます。実需・セカンドハウス・資産運用投資を目的とした購入ニーズを背景として、こうした老朽化マンションの建て替えブームが起こる可能性が予想されます。

 不動産投資家の中には、耐用年数を超えた古い分譲マンションを現金などで購入して建て替えを待つ、といった動きも出てくることでしょう。

 しかしながら、要件の緩和が進んでも、マンションの建て替えは、当該マンション住民の合意形成とエリアの人気状況、建築費・容積率の緩和見込みなどの事業性要件を満たさなければ実現できません。また、大規模マンションでは所得水準や年齢層等が多様であり、この合意形成に長い時間がかかることも考えておく必要はあります。

 今後、首都圏を中心にさらに増える老朽化マンション。要件の緩和による建て替えが、地域の景観や都市の美観を向上させる可能性もありますが、何より、建物の質や耐久性が向上することにより、災害に強い安心・安全・快適な生活環境が確保されます。

 将来的な社会的課題にもなりかねない老朽化マンションの建て替えがスムーズに実現されるようになれば、景気回復の起爆剤となる可能性も見込めます。マンション建て替えをさらに円滑化する今後の活発な動きを期待したいところです。

※1 耐震性不足などの重大要件に関して、全員合意で多数決割合を緩和できる案も検討されている
※2 2020年10月末調査実施

一般社団法人 ライフプランニング協会代表理事
菅井 敏之

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TOPICS 2

今後の需要拡大が見込まれるデータセンター事業

 「データセンター」とは、「アプリケーションとサービスの構築、実行、提供のため、また、それらのアプリケーションとサービスに関連するデータの保管と管理のために、ITインフラストラクチャーを収容する、物理的な部屋、建物、あるいは施設」※1と定義されています。

 具体的には「顧客のサーバー機などのIT機器を設置・収容する場所」であり、「保有データを安定的に運用できるように、さまざまなサービスを提供する場所」であります。簡潔に述べるならば、「さまざまな情報(データ)を保管する場所」といえます。

 データセンターを保有することのメリットとして(クラウドサービスとの比較において)、①IT機器やネットワークなどを自社のニーズに合致する基準で選べる、②秘匿性の高い専用回線でのデータの管理・維持が可能、③障害発生時にも早期の復旧が容易、④本社から離れた場所に設置できるので災害リスクの分散ができBCP(事業継続性)対策に有効、などの点が評価されています。

 中でも「本社機能と距離を置いて設置することが可能」という特性上、土地価格の安い場所を拠点として選択することができ、必然的に地方での開発が多くなっています。

 市場規模は総務省の「令和5年情報通信に関する現状報告の概要」によれば、2022年の売上高は、約2.0兆円(前年比15.3%増)。2023年以降も毎年10%前後の伸長が見込まれ、2025年は約2.8兆円と予測されている※2注目のマーケットでもあります。

 データセンター開発には、IT機器を常に機能させ続けるための運営体制(必要な電源の安定供給、ネットワーク状態の維持、施設内の温度管理など)が必要となります。また、外部環境要因(地震/災害含む)に影響されにくい「堅牢な施設」である必要もあり、インフラ構築のコストは大きいものとなりますが、今後の諸産業のDX化への推移が増大していくことを考えれば、今後の潤沢な需要が見込める商品となります。

 また、受け入れ側にとっても、データセンターの進出は「新たな産業育成・雇用の創出、インフラ整備などが期待できる」という2次的なメリットがあり、積極的に誘致に力を入れている自治体も多くみられます。

 データセンターの稼働には、膨大なデータを潤滑にハンドリングするための、高レベルの電力供給を必要とします。その点でも、円滑な供給体制を構築する土地の確保や、また周辺の一般家庭などとの電力の取り合いの影響が小さいという点でも、地方エリアは立地的には適しているともいえます。

 そうしたケースに合致する事例として、苫小牧市にソフトバンクがデータセンターの構築を計画しているというニュースが注目を集めています。この事業は、北海道内の再生可能エネルギーを100%利用する、地産地消型のグリーンデータセンターとして運用を行う予定でもあり、そうしたさまざまなメリットを複合させながら地方活性化の中核ともなりうる事業として、今後の進展に期待が寄せられています。

※1 日本IBMのホームページより
※2 日本のデータセンターサービス市場規模(売上高)の推移及び予測:IDC Japan作成

株式会社 工業市場研究所 川名 透

国内事業者のデータセンター新設/増設投資予測:2022年~2027年
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TOPICS 3

ヘルスケア施設の今後の展望

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