三井不動産リアルティ REALTY news Vol.102 2023 10月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

銀行の金利上昇が不動産マーケットに及ぼす影響

 物価が高騰し金利の先高観が出ています。

 日本銀行は長期金利の上限目標を+0.25%から事実上+1.0%に引き上げました※1。長期金利は2022年から上昇を続け、全期間固定金利型住宅ローン「フラット35」の金利は2022年1月の1.3%から、2023年9月には1.88%※2まで上がっています。アメリカで利下げが意識され始めそうな年内終盤まで、長期金利の上昇圧力は続くと考えられます。

 一方、短期金利は全く動きがありません。変動金利型の住宅ローンは、反対に金利が下がり続けていて、ネット銀行などでは0.2%台の商品※3も登場しました。マスコミでは長期金利の上昇ばかり騒いでいますが、金利は今このように二極化しています。

 不動産投資や住宅ローンを検討している人の多くは短期金利をベースとした変動金利を利用しており、今のところ長期金利の上昇が不動産マーケットに与える影響は限定的です。

 状況が変わるのは実質賃金が上がり、社会全体で景気の好循環が始まる時。日銀が経済状況をしばらく注意深く見守ったうえで決定し、変動金利はもちろん、2年固定や3年固定の金利水準の上昇も見込まれます。

 勤労収入で返済する住宅ローンの場合、情勢が見えない中で変動金利を選ぶのは怖い、と感じる人は多いです。しかし金利の仕組みや経済の動き方を正しく理解し、自身の財務状況やライフプランを十分に把握していれば、固定か変動かどちらを選ぶかは冷静に判断できます。貴重な現役時代の資産形成期に機会損失をしないためにも、過去の動きを検証し、金利は一本調子に上がるわけではないことを認識していれば、上手く機を捉えることも可能です。

 不動産投資市場において、もともと2~3%の金利上昇を事前に想定して物件を購入している人は、変動金利が上昇したとしても対処できます。銀行融資も適用金利より2~3%高い審査金利を使って融資判断を行っています。社会全体のインフレが進めば賃金も上がり、地域にもよりますが、家賃を上げ、金利上昇による損失をカバーできる可能性はあります。金利上昇時に賃料を上げやすいよう、新規物件は定期借家契約で運営するのも一策です。

 金利上昇傾向になると、銀行の審査時における金利ストレス、つまり審査金利は強まります。新規申し込みのみならず既存の借入金にもストレスをかけられるので、既に残債が多い人にとってはアゲインストとなります。金利の上昇があっても、簡単には破綻しない状態を作るのが基本で、地道な財務基盤の構築が必要です。

 今後の不動産マーケットを見通すうえで、投資家として注目しているのは銀行の金利よりも返済期間の動向です。例外事例ではありますが、住宅ローン50年返済を許容する地銀や、収益不動産融資においても耐用年数を大幅に上回る返済期間を適用可とする銀行の事例も見受けます。2,000兆円を超える個人金融資産、老後に向けた資産形成手段としての不動産購入ニーズ、円安を背景に続々と参入する海外投資家などが背景にある今後の不動産マーケットは、金利だけを視野に入れるのではなく、総合的な情報収集による判断が必要となります。

※1 2023年7月28日 植田総裁記者会見より
※2 フラット35 公式HP 2023年10月時点
※3 SBI新生銀行 2023年10月時点

元メガバンク支店長・不動産実業家
一般社団法人 ライフプランニング協会
代表理事 菅井 敏之

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TOPICS 2

新しいワークスタイルに対応するオフィスとは?

 新型コロナウイルスの影響を受け、在宅勤務制度導入率が大きく上昇し、オフィスワーカーの働き方が大きく変わりました

 同時に、オフィス構成も、従業員一人一人に机を用意する「島型」と呼称される従来の形態から、オフィス内に決められた席を設けず、各自が自由に仕事をする場所を選べる「フリーアドレス型」への転換が進んでおり、2022年調査では「今後導入する予定」まで含めれば約半数がフリーアドレス型に変わる見込み※1です。

 一般的にオフィスのフリーアドレス化は、固定されたデスクスペースを減らし、共用スぺース・打合せスペースを増やすことで、アジャイル(状況に応じて素早く仕様変更ができる)な働き方をしやすくするという目的がありますが、企業経営側から見れば、営業職など日中会社にいない従業員の執務スペースを減らすことができ、柔軟なワークスタイルを導入している会社というイメージアップにもつながることから、多くの企業が「机スペースを半減」し、フリーアドレス化を進めてきました。

 ところが、2023年の5月に新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられた後、人流が大きく回復、オフィスに出社する従業員が大幅に増えたことで、執務スペースを社内で確保できないケースが増加しました。社内に専有できるスペースがないことを理由に、近隣のコワーキングスペースで働く人が増え、コワーキングスペース代が思わぬ経費増になっているケースも見受けられます。

 さらに、問題視されているのが、フリーアドレス化や、在宅勤務などでミーティングがオンライン中心となる働き方では、従業員間のコミュニケーション不足を生んでしまうことがある点です。もともと、日本企業は、組織で協調して働くことを重視しており、従業員教育を含め、組織内コミュニケーションは対面をベースとしてきました。従来のこうした働き方と、「個」をベースとした在宅勤務やフリーアドレス型の働き方にはギャップがあり、相容れない部分が潜在していたと考えることもでき、こうしたことが原則出社という反動的な就業形態の復活が目立っている一因とも考えられます。

 日本のオフィスの伝統的な島型の固定デスクレイアウトの働き方に戻せば、組織的な業務遂行の堅実性は強化されます。また反面、いつも同じ環境(机)で働く必要性を除外した場合では、仕事に新たな気付きやコミュニケーション、創造性がもたらされる可能性も高まります。そうした双方のメリットを勘案しながら、会社・従業員の業務効率を向上させるオフィスづくりを導入するのが正しい選択であり、また、オフィスレイアウトは様々なニーズに対応しながら進化していくものと考えるべきです。

 さらに現在はコロナ禍を経て、サステナブル型オフィスにも注目が集まっています。これは単なるオフィスの機構ではなく、ワーカーを中心にSDGs的な視点における持続可能なオフィス環境をつくることと要約できますが、同時に、よりワーカーの快適性に資するオフィスをも実現すべきといった考え方で、新卒採用や転職・離職防止に役立つとされています。

 日本の多くの企業は、これまで、従業員に対して「自社のやり方」を学び、慣れてもらうことを前提とし、従業員個々の志向をあまり重視してきませんでしたが、これからは、従業員の働き方にフィットし、長く在籍してもらうための働きやすさを考えたオフィスづくりを心がける必要性が高まっています。

※1 森ビル 東京23区オフィスニーズに関する調査 2022年10月実施

株式会社 工業市場研究所 川名 透

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TOPICS 3

新幹線開業で相乗的に注目が集まる道央エリア

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