三井不動産リアルティ REALTY news Vol.100 2023 8月号

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今月のトピックス TOPICS
1 2024年7月の新札発行と不動産市場への影響
2 高騰が続く東京都心の分譲マンションマーケット
3 経営不振で閉館したホテル、その後の再利用・転用事例
TOPICS 1

2024年7月の新札発行と不動産市場への影響

 2024年7月に紙幣が一新されます。

 新札発行の目的は偽造防止とされていますが、別の狙いとしては「タンス預金」のあぶり出しにあると推察します。

 日銀の資金循環統計によると、2022年12月時点の家計部門で保有する現金は109兆円と過去最高となっています。2023年度の国家予算は114兆円なので、日本の国家予算に相当する金額が現金退蔵されていることになります。

 このタンス預金増加の大きな理由は、国に個人の資産を把握されたくないことと思われますが、実際には国税庁の国税総合管理システムなどにより、ほぼ国税庁と税務署に管理されています。

 2015年1月からの相続税の改正で基礎控除が引き下げられ、相続税を支払わなくてはならない国民が増えました。また預金口座にマイナンバー登録が義務付けられているため、今後、国は金融機関に預金している個人の資産保有額を把握することが可能になります。金融資産をタンス預金にしておけば、国に個人の資産を把握されずに済むと考える国民が増えたことで、タンス預金が増えたのでしょう。

 新札発行によりタンス預金をあぶり出すことで、マネーロンダリングや脱税を防ぐ効果もあります。一方で109兆円もの現金退蔵が消費や投資など市場に回れば、経済を大きく循環させることが期待できます。

 タンス預金が金融機関を通して投資や銀行預金に回る場合、200万円を超える大口現金取引は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、本人確認・取引目的や職業などを確認する書類・「疑わしい取引の届出」の措置が義務付けられます。

 2018年、FATF※は日本の金融当局に対し、マネーロンダリングに対する認識と規制が甘いと指摘しました。その指摘に基づいた金融当局の指導により、既にどの金融機関でもマネーロンダリング対策の厳格な運用がなされ、犯罪収益移転防止法で対象となる事業者には、金融機関のほか宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者も含まれるようになっています。したがってこの新札発行に際してのタンス預金のあぶり出しによって、その資金が金融市場や不動産市場に直接振り替わるのはかなり限定的と思われます。

 旧札になっても紙幣としては使えるため、ほとんどのタンス預金は市場に出ることなく眠り続けるとの見方もありますが、新札が普及したときに、旧札をまとめて使用することや、少額に分けて何度も使うことは、誰が見ても目立つ行為となり、特定事業者や税務署から見れば、グレーなお金だと認識されやすくなるでしょう。

 では結果的にタンス預金はどこに向かうのでしょうか?

 2023年6月30日付け日本経済新聞記事によると、伊勢丹新宿店、高島屋日本橋店などの有力百貨店の売上高はコロナ前超えとなったと報じられました。特に富裕層の高額品を買い求める動きが勢いを増しているそうです。

 こうして、「何か書類を書かされるのは面倒だから、その前に使おう」という意識が高まり、タンス預金109兆円のうちの仮に1割、11兆円が買い物や国内旅行などの消費に回れば、大変な経済効果となって、長い間個人消費の停滞に悩まされてきた日本経済は活性化します。

 新札発行を起爆剤として個人消費が伸び、景気の好循環が起これば所得は向上し、所得が増えた若い世代が資産形成を目的として、全国各地で不動産を求める動きにつながっていくことが期待されます。

※FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)
1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立され、マネロン・テロ資金供与・拡散金融(大量破壊兵器の拡散に寄与する資金の供与)対策の国際基準(FATF勧告)を策定している多国間の枠組み。

菅井 敏之

元メガバンク支店長・不動産実業家
一般社団法人 ライフプランニング協会 代表理事

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TOPICS 2

高騰が続く東京都心の分譲マンションマーケット

 最近、ニュースなどでたびたび取り上げられますが、東京都心部の分譲マンション価格が非常に高額となっています。

 具体例をみると、港区では2023年の1~5月で749戸(1月11戸、2月30戸、3月602戸、4月91戸、5月15戸)の供給でしたが、3月の供給602戸中400戸が平均坪単価1,391万円の三田ガーデンヒルズであったため、期間平均は坪単価1,259万円となりました。

 同様に新宿区は409戸(1月3戸、2月46戸、4月164戸、5月196戸)の供給で、パークタワー西新宿(138戸・坪単価652.7万円・平均価格14,126万円)や、クラッシィタワー新宿御苑(118戸・坪単価840.5万円・平均価格21,110万円)のシェアが高いことから、期間平均では坪単価が680.2万円、平均価格が1億円を超える状況になりました。

 千代田区も同様で、1~5月の供給は97戸(1月12戸、2月19戸、4月5戸、5月61戸)ですが、5月の61戸中53戸がブランズ千代田富士見(坪単価1,070.2万円・平均価格34,394万円)であるため、期間平均の坪単価は981.1万円となりました。

 このようにみると、現在価格が高くなったと報道されているエリアの多くは、非常に供給が少なく、供給があった場合は平均価格が1億円超えの超高額物件がその多くを占める市場になっていることがわかります。

 現在、都心5区の中でも最も相場が低いのは中央区で、相場は坪単価500万円台前半(「HARUMI FLAG」は除外)、20坪で1億円を超える価格帯の市場です。建築費や地価の高騰などがある中で、1億円の住戸は年収1,500万円の人が“やっと買える(年収の7倍)”上限金額であり、それ以上になるとほぼ一般の人には手が出せない価格になりますが、これらのエリアが、世界でも上位にある都市の中心部であることを考えれば、これでも決して高いものとはいえません

 例えば台湾の台北では、ファミリータイプの中古マンションでも1億円以上するのは当たり前で、ニューヨーク、ロンドンなどではそれ以上の価格で取引されています。東京都心はすでにグローバル化が進んでいると考えると、ニューヨークやロンドン、香港などと同水準の相場になるのは当然ともいえるでしょう。

 実際、2023年に入って発売した超高額物件の売れ行きは順調なうえに、外国人からの引き合いも多い様子です。その意味では東京都心部は国内でも異質なマーケットを形成しつつあり、価格的にはまだまだチャレンジが可能であると考えられます。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

都心5区の2023年1-5月の平均坪単価推移
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TOPICS 3

経営不振で閉館したホテル、その後の再利用・転用事例

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