日本の「インバウンド関係」がどう報じられているか、海外のメディア5紙からつまみ食いでご紹介しますが、その前に気になる直近の動きを一つだけご報告します。
中国勢の動きなのですが従前の中国本土と香港と台湾に加えて、今後はシンガポール発の資金にも注意すべきようです。習近平が唱える「共同富裕」の実態は「富裕層締め付け」であることがはっきりし、大量の中国人富裕層がエクソダスを図りつつあります。顕著な動きはシンガポールで見られ、中国人の投資会社が現在、続々と設立されているところです。
これらの中国系投資会社はまだ本格的な投資を始めていません。しかしこれが始まれば日本の不動産も有力な投資先の一つとなることは明らかです。最有力なセクターであるホテルでは動きがもう以前から始まっていて、例えば熱海の老舗旅館「つるや」跡地の再生は香港資本が行いました。しかし中国資本がバックにいる可能性は十分に想像されます。
さて、海外のメディアでよく出てくる日本の観光地をざっぱくに見ていきます。
北海道のニセコは、もう世界的にもメジャーなスキーリゾート地となっています。
青森県の酸ヶ湯温泉はこのような豪雪地帯に人が住んでいる点で世界的にも稀です。ちなみに長野県の地獄谷温泉で、サルと並んで入浴する写真が定番だった時期がありました。
岩手県の盛岡は先日、ニューヨークタイムズが発表した旅行先ベスト52の2番目に出ていました。新幹線で東京からすぐだという点と、街の規模がコンパクトで「歩けるサイズ」という点が高く評価されています。
盛岡と似た感じで過去に2回出てきたのが「日本でもっとも癒される港町」を標榜する広島県の「鞆の浦(とものうら)」です。記者の「癒され具合い」が伝わる「名文」でした。
富士・箱根・熱海の観光案内所は6ヶ国語対応ですが、世界的にはこの程度は当たり前です。
伊勢神宮・那智・熊野古道はスピリチュアルな物に関心を持った外国人が訪れます。訪日経験が何回かあるという人は勿論、「初めての日本が『伊勢神宮』だ」という人もいます。
熊野古道は先日、「2週間歩いた」という人のルポが出ました。これほどの長距離のルポは初めてなのですが、「熊野古道」の話より「人生の思い出」を振り返った部分の方が長い記事でした。
京都は別格です。「できれば『お金持ち』だけに来て欲しい」という正直な話がありましたが、京都に限らず、超人気観光地の地元の住民が同じ思いを持つ例は世界に多くあります。
「おおさかのオバちゃん」のキャラは世界的にも知られていて、彼女たちはとても親切に道を教えてくれるが、実は「教えながら自分たちが楽しんでいるのだ」と見破られていました。
下関のフグは英語では「毒の魚」と書かれ、これだと食べるのに確かに勇気がいります。
福岡も先ほどの旅行先ベスト52の19番目に登場、屋台とラーメンが魅力なようです。
本稿をまとめながら気づいたのは、世界にはもの好きな人が随分と多いということと、世界的に有名なメディアはどれも、その読者は大した金持ちではなさそうだということです。プライベートジェットや自分のヨットで訪日する話は、一つもありませんでした。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清