シンガポールでは「バンガロー」とは「土地付き一戸建て」の事で、「豪邸」を指します。元々はイギリスによる植民地経営のための住宅に由来し、その後、モダンなバンガローが多数、建築されましたが、「ラグジュアリー」とされるのは2,500~2,800棟に過ぎません。取引件数は少なく2021年は60件で、これでも前年の3倍です。「グッドクラス・バンガロー」と呼ばれる豪邸中の豪邸群は、世界的にも有名です。しかしバンガローは「土地付き」ですので、外国人は基本的には取得できません。隣接したセントーサ島内でのみ、例外的に取得できます。
シンガポールの最高級住宅地はナッシム・ロードで、有名なオーチャード・ロードの近くにあります。この通りには62棟の「豪華なバンガロー」がありますが、売買件数は5年間で僅か5棟です。たまたまでしょうが、2022年の秋に売り物件が3棟も重なるという非常に稀な状況が起きました。「ナッシム・ロードでバンガローを所有している」となると、これはシンガポールでは大変なステイタスになります。
「グッドクラス・バンガロー」という言葉は非常によく登場します。制度としてうるさく言えばこれは地区計画上の用語です。約39の地区が「グッドクラス・バンガロー地区」に指定されていて、住宅新築の際の敷地の最低面積や建物の階数等の規制を受けます。狭義に言えば「グッドクラス・バンガロー」は「これらの地区内にあるバンガローに限る」となりそうですが、一般的には超豪邸なら場所はどこでも「グッドクラス・バンガロー」と呼ばれています。
バンガローの価格ですが、取引の最高記録は2019年にあった2.3億S$(230億円)です。2020年には2.18億S$(218億円)という売出し価格の物件がありました。バンガローの中には「馬車のポーチ付き」の物も多くあり、広大な庭で、9番アイアンでは端から端まで届かないだろうという物もあります。それにしても法外な値段です。
あえて目途を言うならグッドクラス・バンガローの中心価格帯は3,600~6,370万S$(36~64億円)です。セントーサ島内のバンガローはもう少し安くなります。
シンガポールは世界で最も安定的な成長が見込まれている国の一つで、アジアの金融の中心地の座を香港と競っています。政治的自由の抑圧や新型コロナの蔓延等で香港から逃げ出した人の多くがシンガポールへ向っていますが、まだ香港の方が優位です。
シンガポールは地理的な位置も有利に働いています。マレーシア、インドネシア、ベトナム等の東南アジア諸国のハブとしては絶好の場所にあります。さらに現在、猛烈な勢いで伸びているインドとは近年、ますます結びつきを強めています。
シンガポールの弱点は、あまりに「たいら」で水が出ない事でしょう。マレーシアの南端との間のジョホール海峡に架けられた橋の下のパイプラインを通じて、水の大半を輸入しています。最近では2018年に両国の間で水供給料金の値上げが外交問題となりました。
(S$=100円 2023年1月11日近辺のレート)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清