春がすぐそこに近づきつつあるのを、時折、実感するこの頃ですが、
そうなるともう一つ、悩ましい問題も頭をもたげてきます。
今年は、昨年より花粉の飛散量が多いとの予報も出ており、
お出かけの際は、対策を十分施し、この季節をお過ごしください。
それでは、2月の「リアルティ・リアル・ニュース」をどうぞ。
三井不動産リアルティ株式会社
REALTY real-news Vol.33 2月号 2018
♯1 ノルウェーによる表参道のビル5棟の買収の背景
♯2 2017年の分譲マンション市場をふり返る
Column 豊かな緑が薫る再開発で赤坂はさらに潤い豊かに
1 ノルウェーによる表参道のビル5棟の買収の背景
 表参道の商業ビル5本をノルウェーが東急不動産と組んで購入しましたが、この「ノルウェー」について解説いたします。
 買った主体は「ノルウェーのSWF」と呼ばれる事が多いノルウェーの政府系ファンドです。
 同ファンドは2016年時点で既にニューヨーク、パリ、ロンドン、ベルリン他で不動産投資済みでした。東京とシンガポールでは2015年頃から物件と投資の際のパートナーを探し始めていてそれが今回のディールとなった訳ですが、ディール発表の際に「今後の投資案件については東急不動産以外の会社と組む可能性もある」と明言しています。
 さてこの「ノルウェーのSWF」のファンド規模ですが、昨年9月に1兆ドル(108兆円)の大台に乗りました。日本のGPIFの運用資産は162.7兆円ですが人口一人当たりでは128万円です。ノルウェーの人口は約523万人なので、一人当たりでは2070万円にもなります。
 このような超巨額の「貯金」が出来た理由は、一にも二も「北海油田」です。1960年代に発見されたこの油田の権益の大部分はイギリスとノルウェーが取得しましたが、油田としての規模はさほど大きくなく、当初から早晩、掘り尽くすであろう事が分かっていました。
 イギリスは原油の売却収入を疲弊した経済の立て直しや老朽化したインフラの更新等に使い果たしました。一方、ノルウェーはこれを「別段預金」で貯蓄して将来の為に残すとしたのです。その別段預金が今の「ノルウェーのSWF」となっています。
 毎年の原油収入の繰り入れと、ファンドの順調な運用成績の結果、「1兆ドルファンド」となった訳ですが、問題も出てきました。規模が大きくなりすぎて、なんと「世界の全上場株の1.5%相当も所有する」状態になってしまったのです。これでは「池の中のクジラ」になりかねません。
 そして着目したのが不動産です。同SWFは昨年暮れの投資の際に、ポートフォリオにおける不動産比率を現在の2.5%から2019年までに4%に引き上げたいとしています。これは「1兆ドル×1.5%」の150億ドル(1.62兆円)分の新規購入だけでは済みません。1兆ドルが10%で回っているとしてその4%分の2年分である80億ドル(8600億円)、合計230億ドル(2.48兆円)もの不動産を2年間の間に買わないとこの目標は達成できないのです。
 なお原油価格の長期低迷で2015年から同SWFは「引き出し」に陥っています。しかしファンドの運用利回りによりこの「引き出し」を賄えているので、この点の問題はありません。  
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
(ドル=108円 2018年2月21日近辺のレート)
2 2017年の分譲マンション市場をふり返る
 不動産経済研究所の発表によれば、首都圏における2017年新築分譲マンションの新規供給戸数は3万5,898戸。2016年の3万5,772戸よりは若干多くなったが、2年連続で4万戸に届いていません。
 一方、平均価格は各地区で上昇基調にあり、首都圏の平均価格は5,908万円と1990年以来の高値となり、バブル期を彷彿とさせるものとなりましたが、売れ行きは低迷が続いており、2016年の平均初月契約率68.8%よりも低い68.1%に留まっています。さらに、販売在庫数は2016年末に続いて2017年も7,000戸を超えています。
 簡単にまとめると、首都圏の2017年市場は、供給減少に歯止めがかかったものの、価格の高騰により、売れ行きの良くない状況にあるという事になり、別の視点で見れば、ここ数年で非常に相場の上がった都区部とそれ以外の地域での二極化が進んでいると考えられます。立地や商品力の高い都心部の高額物件はその希少性から高額でも売れていますが、建築費の高騰の影響を受けている都心部以外の物件は、商品力を高めても市場的に価格に届かないユーザーが多くなったことで苦戦。長期化を強いられています。
 ところで先に述べた“バブル期を彷彿とさせる価格”とは首都圏平均の価格ではなく、“平均が7,000万円を超える都区部”の、あるいは“平均が1億円を超える都心3区”の価格と見るほうが良いです。その他の地域は高くとも平均5,000万円前後、埼玉・千葉ではまだ4,000万円クラスに留まっていることを考えれば“バブル化”とは言いにくいと考えます。
 問題は、売れている都心と、売れていない都心以外の二極化が進んでしまったことで、特に昨年、都下と埼玉県は、年間平均初月契約率が60%を下回る状況で、苦戦物件が多くなっています。これからまだ相場が上がると考えられている都心部とは違い、実需が中心となる都心物件以外が価格上昇に敏感に反応するのは当然で、どんなに商品力を高めても一次取得層の多くには限界があり、その市場活性化にはある程度価格調整が必要になってきているというのが現状なのではないでしょうか?
株式会社 工業市場研究所 川名 透
地区別平均価格の推移 / 地区別供給戸数の推移
Column
豊かな緑が薫る再開発で赤坂はさらに潤い豊かに
東京ミッドタウン
東京ミッドタウン
 「アジアヘッドクォーター特区」であり、港区まちづくりマスタープランの中では都市活力創造ゾーンに位置付けられている赤坂エリア。土地活用については、都市の魅力や賑わいを備えた商業・文化・交流等の多様な集客機能及び業務機能のさらなる集積促進が方針として掲げられています。
 数々の再開発事業が行われている中で、これらを如実に具現化しているのが「東京ミッドタウン」と「赤坂サカス」です。商業施設、オフィス、住居棟、公園や広場。そして東京ミッドタウンには美術館等、赤坂サカスには劇場やライブハウス等の文化施設。共通する構成要素を各々が個性を生かしながら昇華させることで、都心にまったく異なる魅力を放ち、赤坂のオフィス環境と集客に大いに貢献する結果を生み出しました。
 また、赤坂はもともと大きな緑地帯を持つエリアです。近年の再開発事業は赤坂に豊かで美しく整備された緑地空間をもたらすことになり、赤坂は港区の中で最も緑被率・樹木被覆率が高い地区になりました。昨年9月に赤坂一丁目地区第一種市街地再開発事業として新たに誕生した大規模複合開発「赤坂インターシティAIR」も、その一端を担っています。緑被率50%以上の大規模な緑地空間を設定し、地域にも開かれた憩いの空間を創出。さらに、虎ノ門方面への緑のネットワークを結ぶ「赤坂・虎ノ門緑道計画」の西側の起点となる、約200mの街路樹空間が整備されました。
 現在計画が進行しているものには、赤坂ツインタワー跡地を中心とする超高層複合ビル「(仮称)赤坂二丁目プロジェクト」があります。来年着工予定のこのビルは国際級ホテルやサービスアパートメント等で構成され、赤坂周辺の地域資源である江戸型山車の修復・展示、ジャパンブランド発信施設の整備など、観光面から国際競争力の強化が推進されるそう。赤坂には次々と新たな表情が加わり、緑と活気に満ちた国際都市へと成長しています。
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